壁の中の鼠

ラブクラフト全集1巻「壁のなかの鼠」をもとにした半クローズドシティシナリオ。探索者たちは、とある事業家の依頼を受け、彼の館の地下にある遺跡を調査する。

中編 / クラシック / 因習

DESCRIPTION概要

探索者たちは、とある事業家の依頼を受け、彼の館の地下にある遺跡を調査する。
※元ネタのネタバレあり。ご注意ください

形式
シティ
推奨人数
3人~
推奨技能
目星、図書館、オカルト、ナビゲート、考古学、歴史等
時間
中編(6時間~)

KP向け情報

INTRODUCTIONはじめに

館の主人から、館の地下の遺跡を調査してほしいと依頼された探索者たち。調査を進めるうちに、探索者の一人が奇妙な夢を見るようになり、仲間を襲ってしまう。本人はそのことを覚えておらず、ただ「私じゃない、鼠がやった」と繰り返すばかりだ。
館の地下には何があるのだろうか?また、探索者に起きた異変の原因を突き止め、脅威を退けることができるだろうか?

対象
研究者や土木関係者、館の主人の知り合いなど
推奨人数
3人~
ロスト率
発狂
SANチェック多め
注意事項
オリジナル神格が登場
神格
犬神鼠(犬神の一種)、ニャルラトホテプ

※シナリオの途中で探索者一名にHOが付与されます

シナリオ規約 》

THE TRUTH真相

館の主人で、とある事業家の安房喜明(アボウヨシアキ)は、遠い自分のご先祖様が所有していたという更地同然の館を建て直し、その地に残るご先祖の資料を編纂する余生を送ろうと考えた。調べるうちに、どうやら館が放置されたのは、先代が館で起こした陰惨な事件のためであるらしいとわかった。

実は安房家は代々犬神憑きの一族「犬神筋」であり、富と繁栄を得る一方で、犬神の強大な力のために食人癖を発症する者がいた。藍島の住人をさらっては、犬神筋の者しか入れない館の地下に閉じ込め、喰らっていたのである。事件を起こした祖先もその一人だったが、発狂し、人を喰らったのは”犬神”の仕業だと思いこんだ。

既に犬神のことは忘れ去られており、犬神の封印は今にも解けかかっている。
それとは知らずに呪われた館に戻ってきてしまった主人、また、数奇な運命を持って訪れた探索者一名は、呪いにあてられて発症してしまった食人癖を抑え、”犬神”を祓わねばならない。

先代が起こした事件について

安房家の先代のとある主人は、犬神の強大な力にあてられて食人癖を発症し、島の人間をさらっては館の地下に閉じ込めて食っていた。人さらいがいるという噂がまことしやかに囁かれ始めたころ、彼はついに発狂し、その時館に住んでいた彼の妻、両親、子供2人、そして召使5人のうちの2人を虐殺してしまう。

この事件は世間を賑わせたが、なぜか彼は釈放されて本島の方へ移り住んだらしいという話だけが残っている。
うち捨てられた館はいつしか取り壊され、土台部分を残してほぼ更地になっていた。藍島の人々は呪われた館だと噂し、誰も丘に近寄る者はいない。

DEITIES登場神格

犬神鼠(いぬがみねずみ)

犬神は、狐憑き、狐持ちなどとともに、西日本に最も広く分布する犬霊の憑き物。犬神持ちの家は富み栄えるとされている一方で、祟神として忌諱される場合もある。
山口県のある地方では犬神のことを犬神鼠(いぬがみねずみ)ともいい、長い口を持つハツカネズミのようで、一家に75匹の群れをなしているという。

ニャルラトホテプ

地下2階を探索した際に、HOを付与された探索者が見る幻覚の中にのみ登場する。

本編の流れ

1日目

藍島、安房の家に到着し、もてなされる
地下1階の調査
自由探索
就寝 - 安房と、HOが豚人間の夢を見る

2日目

地下1階の調査、さらに深い地下2階の発見
自由探索、準備など
地下2階の探索
呪にあてられたHOが食人癖を発症し、他の探索者かNPC一人に襲い掛かる

2~3日目

自由探索、準備など(犬神を祓えるという、胡散臭い神社についての情報を得る)
再度、地下2階の探索
最深部へ到達し、犬神の首を発見
犬神の首をどうするかでEND分岐

導入

探索者たちは、事業家である安房喜明に招待され、山口県の北に位置する「藍島」へ向かう。安房が最近購入し、建て直したという館の地下に見つかった遺跡の調査依頼を請けたためだ。
数泊分の荷物を抱え、藍島へ向かう船へ乗り込むことになる。

藍島に訪れた理由

導入として他にも以下のような理由をつけると良い。
安房の友人で、地下に面白い遺跡のようなものを見つけたので見に来ないかと誘われる。あるいは、地質学者または建築関係の人間で、屋敷の立て直しという大掛かりな工事のため本島から呼ばれてしばらく滞在している、など。

依頼について

調査名目で訪れる探索者は、安房から下記のことを聞いている。その他の質問も大体答える。

隠居しようと思って財産を整理していたところ、祖先の館跡が藍島に残っており、巡り巡って幸運にも友人の手に渡っていたことを知って買い戻した。 地下の遺跡はずいぶん古そうだが、年代や由来などがよくわからない。価値があるものかどうか調べたい。
財産整理と先祖の調査の為に集めた資料を館に置いているので、必要であれば自由に見てもらって構わない。

安房喜明(アボウヨシアキ)

様々な事業を先代から受け継ぎ、ゆったり暮らしているおじさん。調べても特に面白い話題は出てこない。

友人の太田徳介(オオタノリスケ)から、自分の遠いご先祖様が所有していた館の話を聞き、この土地を買い戻して建て直し、余生を過ごすことを決める。

藍島

山口県の北に位置する小さな島。野良猫が多く住んでいることで有名で、猫好きにはたまらない。なんとなく字を変えています。

藍島について《図書館》または《オカルト》

成功で、古い新聞記事を紹介している個人のブログ記事を見つける。

ブログ記事

オカルトマニアによるブログ。「一夜の恐怖!霊との交信によって狂った男が起こした一家惨殺事件」というタイトルで、古い新聞記事の切れ端の写真を載せている。

藍島のとある富豪の家で、一夜にして家族と召使2人が惨殺されたという昔の事件を紹介している。容疑者は現場で確保された父親で、いったんは捕まったが、何故か釈放されて現在は行方不明らしい。
筆者によると、容疑者は日常的に霊と交信しており、あるとき何らかの術の失敗によって発狂し、事件を起こしたという。根拠としていくつかの似たような事例や霊について紹介しているサイトの記事を引用しているが、かなり胡散臭いと感じる。

※過去に起きた事件を示唆する情報。霊との交信というのはただのブラフで、超自然的な何かの力が関わっていたかもしれないということが伝わればよい。

本編

この日のメインイベント

探索者たちとNPCの自己紹介
地下の探索
就寝後にHOが見る夢と、壁の中から聞こえる足音
自由探索も入れてよいが、メインイベントである壁の中の足音を聞いてから2日目に調べる方が盛り上がるだろう。

SCENE 011-1:藍島

昼食を一緒にと誘われているので、だいたい12時前ごろに島に集合する。
藍島に着くと、船着き場すぐのところで仕立てのよいスーツを着た老年の男が待っている。安房の使用人で笹丘(ササオカ)と名乗り、近くに停めてある車に探索者を案内する。
笹丘は島の向こう側にある小高い丘のてっぺんの館を示し、あれが安房の館だと説明してくれる。館の向こう側は木が生い茂り、またこちら側は崖になっている。
広い車に全員を乗せると、車は安房の館へゆっくりと発進する。

使用人の笹丘

安房が本州に住んでいたころからの使用人。落ち着いており、大抵のことをそつなくこなしてくれる。安房家に代々…というわけではないので、安房が知らないことについては笹丘も知らない(安房家の過去や呪いなど)。

会話例

藍島で見て回れる場所について

猫が多いので、猫好きの方がよく写真の撮影に来る。また地元の人が経営しているコンビニ(8時に閉まる)、町役場、図書館がある。

館の地下の遺跡や、安房について

専門家でないので、よくわからない。不思議な雰囲気である。
館を建て直したばかりなので、主人は浮かれている。調査という目的で来てもらってはいるが、よければ主人との会話も楽しんでほしい。

1-2 安房の館

館は小高い丘の上にあり、藍島全体を一望できる。館と町をつなぐ道は一本しかなく、木々が生い茂る崖の間を縫って進むため、車でないと行き来は厳しいだろう。
館が建っている丘は思っていたより広く、館の他に車庫、ベンチの置いてある小さな庭、小さな倉庫がある。探索者が車から降りると、館の入り口に中年の女性がエプロンを付けた姿で立っている。

車庫や小さな庭、倉庫など

調べても特に何もない。倉庫は色々な道具が入っている。ベンチはくつろいだりするのに使える。
館の中の資料室で探索者が取りこぼした資料があれば、倉庫から見つけさせるなどしてもよい。

使用人の水崎(ミズサキ)

安房の使用人で、館の掃除・料理等の家事を担当している。笹丘に比べると少々かしましいが、よく気の付くよい使用人である。

水崎は探索者を迎えると、食堂へ案内する。荷物は笹丘が運び出し、客室のある2階へ運んでくれる。
家へ足を踏み入れると、猫が足元を駆け抜けていく。屋敷内のあちこちに猫がいるようだ。「旦那様はそれはそれは猫がお好きで」と水崎が説明する。
あなた方は廊下を進み、奥の食堂へ通されるだろう。

1-3 もてなし

食卓にはすでに安房と、他に2人の男が座っている。安房は入ってきた探索者に席を勧めたのち自己紹介をし、先に座っていた女性、倉橋澄香(クラハシスミカ)を紹介する。理知的な印象の女性だ。倉橋は探索者にあいさつと簡単に自己紹介をする。

倉橋澄香(クラハシスミカ)

安房の友人で、言語学や歴史などに詳しいディレッタント。安房が、この地に残る安房の祖先の不吉なうわさについて調べるのを手伝っている。

資料「安房の祖先の遺書」の解読を専門の学者とともに行っており、2日目のどこかの時間で倉橋は安房に解読済みの手紙を手渡す。資料の内容については後述。探索者は2日目以降にこの手紙の内容を読むことができる。

※描写が無い限り、倉橋は安房家で何か資料を探しているか、滞在しているホテルの一室にいる。

食事でもてなされながら、安房と会話をすることになる。

想定される会話

安房は朗らかで嫌味のない人物で、探索者との会話を楽しんでいる。会話の中や、必要があれば勝手に安房が喋って適宜以下の情報を出すと良い。

・地下について

地下についてわかっていることは少ない。館を建てる前に地質調査をしたところ、人工的につくられた地下室とそこに続く階段が発見されたので、いつでも地下に行けるよう屋内に地下への扉をつける形で館を建てた。
地下には不思議な石の立方体の台があり、いつの年代のものかや、どういった由来のものかを調べたいと思っている。
※安房は名もない遺跡の発見に浮かれており、訪れた理由が地下の調査がでない探索者にも是非見てほしいと勧める。

・藍島について、または観光地について

館が完成して間もないのでまだあまり詳しくないと言うが、館の道を下ったところにあるタバコ屋のおじいさんは、島に詳しいようだと教えてくれる。
また、猫好きな安房は、猫が集まるいくつかのおすすめスポットも教えてくれる。藍島に観光できるスポットはほぼないが、海辺で遊べたり釣りができたりといったスポットを用意して探索者を遊ばせても良い。
猫が集まるスポットは、数時間滞在して猫と戯れることでSAN値が1d3ほど回復する。

・猫について

安房は無類の猫好きで、ブリーダーから買い取った猫や、捨てられて行き場のない猫など、様々な猫を飼っている。猫について話を振ると、安房は猫がいかにすばらしいかを語った後、この屋敷で一番かしこい猫だと言ってそばにいた黒猫の「くろすけ」を紹介する。
※猫はのちのち、地下最深部の探索のときなどに重要になるため、他の機会でもいいので「くろすけ」を紹介してPLに猫の存在を意識させておく。

・倉橋について

専門は歴史や言語学で、地下については彼女も見てみたものの特にわかることはなかったようだ。何を手伝っているか聞かれれば、安房の先祖が残した遺書のようなものの解読を行っていると答える。
※遺書は2日目には探索者にも開示される

1-4 地下の調査

食事がすむと、安房と探索者の全員で地下に行くことになる。地下への階段は、1階の廊下のどこかの扉を開けるとあり、扉は普段は鍵が閉められている。

地下への階段は壁にライトがひっかけてあるため、それなりに明るい。階段はもともとあったものを修復せずに残してあるのか、少しでこぼことした石づくりになっている。
そう長くない階段を降りると、地下へ着く。1階に比べると狭く、大人が5人ほど入ると狭く感じるだろう。

洞窟のように石か土の混ざった堆積岩をくりぬいたような部屋だ。劣化を防ぐためだろうか、オレンジ色の弱めの明かりが部屋の中央につるされており、その真下に長方形の寝台のような台座が鎮座している。
安房が興奮気味に台座に奇妙な模様があることなどについて説明するが、大した情報はない。期待のまなざしで探索者を見てくる。

地下を自由に調べることができる。気になるものは台座と、その側にある石版くらいだ。

HOの決定

地下に到達した時点で探索者全員に1d100を振ってもらい、もっとも出目が大きかった探索者をメモしておく。
もっとも出目が大きかった探索者にHO「犬神筋」が付与される。この情報はPLには秘匿する。

HO:犬神筋

この探索者の遠い祖先は犬神筋だ。犬神を使役していた側ではなく、犬神筋から呪いを受けそう呼ばれるようになった家系の血を引いている。
これからHOは、安房の館で夜を迎えるたび気味の悪い夢に悩まされる。また地下2階の探索時、呪の影響を受け本人の意識がない状態で食人癖を発症する。

台座

長方形で、人ひとりが寝転べそうなくらいの大きさ。見たことのない奇妙な文様が刻み付けてある。古く、角が崩れたりしているが、明らかに人工物である。

石版

台座の裏に回ると、台座の近くの地面に小さな石板が埋め込まれているのを見つける。薄肉彫りで文字のようなものが刻まれているが、劣化しており、また古い言葉で書かれているためこのままでは読めない。

薄肉彫りに《日本語》+《アイディア》

全体の意味をとることはできなかったが、いくつか意味のありそうな単語を拾える。
「モモタリ」「マダラ」「イヌガミ」

※日本語クリティカルまたは日本語に精通している学者などは、「モモタリ」が「ひとり、ふたり、みたり…ももたり」つまり、100の数を表す言葉であることを知っている。

イヌガミについて《オカルト》

成功で以下のことを知っている。
犬神は、狐憑き、狐持ちなどとともに、西日本に最も広く分布する犬霊の憑き物。犬神信仰の形跡は島根県西部から山口県、九州全域、さらに薩南諸島より遠く沖縄県にかけてまで存在している。
犬神持ちの家は富み栄えるとされている。一方で、狐霊のように祭られることによる恩恵を家に持ち込むことをせず、祟神として忌諱される場合もある。

SCENE 022-1:自由探索(1・2日目で調べられる場所)

地下1階をひととおり調べたのち、自由に行動することができる。1日目はすでに夕方であり、またこの日は夜のイベントがメインなので、ほどほどで切り上げさせると良い。
1日目、2日目共通で、調査することで情報が出るのは下記の場所。その他の場所の描写はKPにお任せする。

藍島の夜

日が暮れるころになると出歩く人は少なくなり、夜になるとほとんどの住人が家に籠ってしまう。街灯の少ない町は暗く、車無しで出歩く場合道を見失う恐れがあるかもしれない。また、ひっそりと静まる町の中のいたるところから、とととと……カサカサ…といった小さな生き物の気配がする。

※夜に出歩いていても特になにかが起きるということはないが、1日目夜に起きる事件へのフラグ立てや、探索に時間制限を設ける意味でのフレーバー。安房が館に戻ってきてからというもの、藍島のいたるところで鼠が増え始めている。藍島に住む住民は島に伝わる鼠についてのうわさや昔話のため、夜に出歩くことや、鼠を忌避している。

安房の屋敷内

地下 ☆安房の鍵が必要
2階・資料室
2階・安房の部屋 ☆安房の鍵が必要

藍島全体

タバコ屋
図書館
山奥の破れ寺 ★情報を得た場合のみ探索可能

上記に記載されている場所以外では特に情報はないが、タバコ屋で聞ける”山奥の破れ寺”の情報を取りこぼしている場合は他の場所で出してもよい。

安房の屋敷内の調査

屋敷内は相変わらず、猫がそこらじゅうでころころしている。猫は全部で9匹ほど。 使用人は二人とも屋敷の中で仕事をしている。また、安房は基本的に自室か、探索者に着いて地下にいる。 以下屋敷内の情報。

1階

どの部屋も、特に情報はない。好きにくつろいだり、猫と戯れたりできる。

2階・資料室

簡素な本棚がいくつか置かれた部屋。書き物机と椅子もあるが、基本的に武蔵が陣取っているので使えない。
整頓されており、本棚に入っているのは安房家や藍島にまつわる資料や、書類をまとめたファイルのようだとざっと見ただけでわかる。

KP向け情報:安房も、地下の石板の情報から犬神についての情報を集めているため、「犬神」「呪い」などのワードを指定して《図書館》を振った場合、追加で資料を得ることができる。
「犬神」にまつわる資料は、藍島にある図書館でも見つけることができる。

資料室で《図書館》

成功で「古い名簿のようなもの」を見つける。
さらに、「呪い」「犬神」などのワードを指定して図書館を振った場合の資料を後述する。

「古い名簿のようなもの」

日付と、人の名前、住所、そしてもう一つ別の人の名前、年齢と思われる数字が一列に並んだものがずらずらと書かれている名簿。

KP情報:安房家の祖先が犬神を使って呪いを行っていた記録。日付は承った日時、呪いを依頼してきた人物の氏名と住所、呪いをかけたい相手の名前、年齢が書かれている。

内容に《図書館》または《目星》

HOの苗字を見つける。日付は古く、年代が書かれていないので、いつごろのものかは不明だ。珍しい苗字でもないが、少し気になる。

HOの苗字について、本人が《アイディア》

なかなか思い至らないと思うので、クリティカルで結果を開示する。 そういえば、祖父方の親戚がこの辺りに住んでいた気がする。若くして亡くなったらしいということしか知らない。

「古い名簿のようなもの」について、安房またはNPCに聞く

一種のカルテのようなものではないかと思っているが、詳しくはわからないと説明する。

「犬神」「呪い」などのワードで《図書館》

成功で「山陰地方の伝承 -犬神編-」、「まじないの作り方 呪い大全 第2版」の2つの資料を見つける。

「山陰地方の伝承 -犬神編-」

前半は犬神についての《オカルト》で得られなかった結果が載っているが、それに加えて情報が手に入る。情報量が多いため、以下の重要な部分を得るためには3時間ほどの時間を要する。

”犬神(いぬがみ)は、狐憑き、狐持ちなどとともに、西日本に最も広く分布する犬霊の憑き物。犬神信仰の形跡は、島根県西部から山口県、九州全域、さらに薩南諸島より遠く沖縄県にかけてまで存在している。
犬神持ちの家は富み栄えるとされている。一方で、狐霊のように祭られることによる恩恵を家に持ち込むことをせず、祟神として忌諱される場合もある。
………

また、犬神を使役するとされる家だけでなく、犬神によって呪われた家も犬神筋と呼ばれて忌避されることがある。
………

犬神の容姿は若干大きめのネズミほどの大きさで斑があり、尻尾の先端が分かれ、モグラの一種であるため目が見えず、一列になって行動すると伝えられている。犬というよりはオサキや管狐を思わせる。または、ハツカネズミに似て、口は縦に裂けて先端が尖っているといわれることもある。
山口のとある地方では犬神のことを犬神鼠(いぬがみねずみ)ともいい、長い口を持つハツカネズミのようで、一家に75匹の群れをなしているという”

「まじないの作り方 呪い大全 第2版」

様々な呪いの方法が載っている本。言葉が古く、少し読みづらい。読むのに1~2時間程度かかる。読み進めると、犬神憑きの呪術について書いてあるページを見つける。

-犬神のまじない-
犬を生きたまま頭部のみを出して埋め、または支柱につなぎ、その前に食物を見せて置き、餓死しようとするときにその頸を切る。頭部は飛んで食物に食いつく。
これを焼いて骨とし、器に入れて祀る。すると永久にその者に憑き、願望を成就させる。

-力を操る-
犬神の力が強くなり、家に害をなすことがある。犬の頭部を一部焼かずに残しておき、生身とし、呪詛をかけるとよい。

2階・安房の書斎

安房が持っている鍵がないと入れず、また、入るときには安房同伴となる。1日目は特に情報はない。
本棚と高そうな机、椅子が置いてある普通の書斎だが、窓が遮光カーテンで締め切られているうえ、オレンジ色の弱い電球のみがついているため、暗い。机の上には古そうな紙や色々な道具が雑多に置かれている。
奥にドアがあり、その先は安房の寝室に繋がっている。寝室に情報は特にない。

2日目に来た場合、朝に安房から受け取っていなければ、解読が完了した「安房の先祖の遺言書」がここに置いてある。

KP向け資料:家系図や古い資料をまとめなおす作業を行っているので、資料を傷めないために暗くしている。

藍島にある施設での調査

館以外の場所で安房の名前を出したり、それについて聞こうとすると、地元の人間や特にお年寄りなどから嫌悪のような対応を受ける。安房の祖先が藍島で起こした陰惨な事件により、この地の人間は安房の館を「呪われた館」だと信じており、それを建て直した安房を避けている。

藍島の住民から聞ける話

鼠にまつわる伝承が多い。会話の中で藍島に猫が多いことについて触れたりすると下記のような伝承があると聞ける。
夜な夜な安房家のものが住人を攫っていたので、それが犬神鼠の伝承と合わさって「鼠が人を食う」といった話として伝わっている。

  • 昔藍島には鼠が多く、猫を飼うことで駆除した。それで、今でも藍島には猫が多く、住民も猫と共存している。

  • 鼠は災いを連れてくる。

  • 安房の館は呪われており、その昔には蝙蝠の羽を付けた鼠が夜な夜な宴会を開いていたという。

  • 藍島に猫が来る以前は、行方不明者が多かった。鼠の大群が、行く手にある食物や畑のものをことごとく食い尽くし、果てはニワトリ、犬、豚まで食い、不運にもその大群に出くわした人間を食っていたからだと言われている。

タバコ屋

年老いた気の良さそうな男がぼんやり店番をしている。若干ボケ気味だが、観光名所や藍島の伝承などについて聞くと、以下のことを教えてくれる。

  • 伝承などについては図書館にまとまっていること

  • 安房の館近くの山奥に、誰もいない陰気な破れ寺があること
    ※場所は正確ではないので、図書館で「古い地図」を手に入れていなければナビゲートが必要になる

図書館

《図書館》

成功で、安房の資料室でも見つけられる「山陰地方の伝承 -犬神編-」、「まじないの作り方 呪い大全 第2版」を得られる。できれば「犬神」「呪い」のワードを指定してほしいが、ここで詰まるのも微妙なのでKPの裁量に任せる。
それぞれの資料の内容は前述の「安房の館2階 資料室」を参照のこと。

「古い地図」を探すために《図書館》

タバコ屋で山奥の破れ寺について聞いており、藍島の古い地図について調べると宣言があれば、《図書館》成功でを発見できる。持ち出し禁。
これを持っている場合、ナビゲートなしで破れ寺へたどり着くことができる。

役場

なかなか無いとは思うが、HOが資料「古い名簿のようなもの」からアイディアで思い至った遠い親戚について調べようとした場合、役場で問い合わせることができる。
資料の照会には1日を要するので、次の日また来るように言われる。

再び訪れると、遠い親戚が藍島に住んでいた記録が確かに残っており、また中年になる手前くらいで亡くなっていることが載っている。資料を詳しく調べれば、なにか大量の小さな動物に身体じゅうを食いちぎられたような傷跡が残っていたという不審死だったこともわかるかもしれない。
SANc(0/1)

破れ寺

タバコ屋で破れ寺の情報を聞き、図書館で古い藍島の地図を手に入れる必要がある。地図を手に入れていない場合、たどり着くには《ナビゲート》が必要。

地図をもとに山の中の道なき道を30分ほど歩くと、地図で示されたあたりに、崩れかけているがかろうじて人工とわかる石の階段を見つける。顔を上げると、階段の先に傾いた鳥居があるが、今にも倒れそうだ。

鳥居をくぐった先には朽ち果てた本殿らしき小屋があり、「賢見神社(総本山)※元祖」と書かれた看板がついている。寺と聞いていたが神社であるうえ、うさんくさい。

「賢見神社」について《オカルト》または《図書館》

賢見神社は徳島の山間にある神社で、犬神憑き、狐憑きなどを落とす「随一の」神社である。総本山が別にあるという情報はどこを調べても出てこない。

本殿へ向かう

小屋はボロボロで草が生い茂っており、人の気配はない。また神社の周囲は木が生い茂っていて、昼間でも暗い。
調べようと小屋の中を覗くと、奥の方に、ぼんやりと白い何か…背中を丸めてうずくまっている老婆の背中が見える。小屋の外から声をかけても反応はない。

床や壁はあちこち白アリにくわれて抜けていて危ない。中へ足を踏み入れ、老婆のそばへ寄ると「何もんじゃあ…」と向こうを向いたままいきなり話しかけてくる。
色々と話を聞くことができる。キャラが濃い。

老婆

年齢不詳で、生きているのが不思議なくらいに見える。古びた巫女服をまとっている。犬神を祓うことができるというが、そのためには「祀られている犬神の完全な首、またはそれを焼いた骨と灰のすべて」が必要だという。
END分岐に関わる重要な情報なので、必ず伝えること。
※「祀られている犬神の完全な首、またはそれを焼いた骨と灰のすべて」とは、安房の館地下2階で見つかる祠の中の「骨壺」(犬神の首を焼いた灰)と、犬神の舌たる赤い布のついた札の両方のことである。

HOがすでに悪夢を見ていたり、呪いに当てられて食人癖を発症したりしていれば、気づくかもしれない。「お主、このままではバケモンになるぞォ」
また、安房の館について聞くと、過去に陰惨な事件があったことを語り、最近まずい気配を感じると話す。ふもとに降りないため、安房喜明が家を建て直したことは知らない。

SCENE 033-1 悪夢

夕食は外でとっても、安房家で準備してもらっても良い。夜をゆっくり過ごし、就寝の時間まで進める。

就寝時、それぞれの客間に猫が入り込んでいることを描写しておく。HOの部屋には「くろすけ」と呼ばれた黒猫がいる。
就寝後、HOは下記のような夢を見る。

HOは高いところから、薄明りの指す洞窟のような場所を見下ろしている。そこは泥や腐った何かの塊や汚物にまみれており、ぐにゃぐにゃと形を変える、ブタか牛くらいの大きさの不定形のみっともないけものがあちこちで蠢いている。

不定形のけものが幾人もの魔物の豚飼いといった様子の人間たちに追いまわされて、ひと固まりに集められたのを合図に、洞窟のあちこちからドドドドと地鳴りのような音が聞こえてくる。いきなりどこかから現れた大量の鼠の大群が洞窟になだれ込むやいなや、けものも人間もあっという間に鼠の大群に群がられ、貪り食われてしまった。

それらの身体がやぶれ、中身が飛び出すのを、あとからあとから湧いてくる無数の鼠が啜っている。HOは恐怖で声を出すこともできない。
おぞましい光景に《SANチェック》 1 / 1d2

HOは右手に鋭い痛みを感じ、目を覚ます。「くろすけ」がHOの右手に噛み付いているのだ。体は膜を張ったように汗をかいているだろう。
HOのみ、壁の中から音が聞こえる。小さな軽いものがたくさん移動しているような音だ。部屋もがたがたと大きく揺れ、這って移動するのがやっとだ。音が壁の中をあっちへ行ったり、こっちへ行ったりするたびに「くろすけ」が音の方へ向かって威嚇をする。部屋の外からも猫の唸り声が聞こえている。

そのうち、壁の中の音が下の方に向かって移動する。「くろすけ」が部屋のドアに飛びついてガリガリとひっかき、外へ出たがる。ドアを開けると、一目散に地下へと駆けていく。
音が下の方へ向かった後、音はやみ、家の揺れもおさまる。

他の探索者には猫の唸り声のみが聞こえる。聞き耳などを振って、目を覚ますかどうかを判定する。目覚めた探索者は、猫たちがいやに気が立って、壁を引っ掻いたり、ドアを引っかいて外に出たがったりするのを見る。

廊下に出る

奥の部屋から安房が飛び出して来る。
ひどく取り乱した様子で、今の音はなんだ、壁の中に何かがいる、などと説明する。また、鼠かもしれないから、明日は鼠駆除の業者を呼ぶと怯えた様子で言う。

鼠の足音について

KP情報:犬神筋の者のみ、犬神鼠の足音を聞く。これは取り憑かれた者の妄想かもしれないし、実際に目に見えない鼠がいるのもしれない不可解な現象である。
夜になり、就寝するたびに現れて、地下に向かって消えていく。

地下に向かう

後述の「地下の探索」を参照のこと。空いた穴を確認したらいったん準備のために朝を待ってほしいが、このままさらに地階を探索しても良い。

2日目

この日のメインイベント
地下2階の発見
地下2階の探索と、HOの発狂による負傷者の発生
調査

SCENE 044-1 遺言書の解読

朝、1階に下りると、ダイニングで安房と倉橋が会話している。倉橋が安房に頼まれていた遺言書の解読が完了したという内容で、安房は倉橋から封筒を受け取っている。

探索者たちが入ってきて遺言書について聞くのであれば、解読した内容を見せてくれる。内容を知っている倉橋が「かなり気持ち悪い内容だけど、それでも読むのか」とちょっと引き留めてくる。
※ここで遺言書を見なくても、今後は安房の書斎に保管してあるのでいつでも見ることができる

遺言書

過去にこの屋敷で家族や召使を虐殺したという例の祖先が書いたものらしい。倉橋澄香が安房の家系をたどり、遠い親戚から借り受けてきた。
手紙自体は劣化しておりほとんど読めないが、専門家に頼んで解読してもらった内容は下記。

「毎晩この屋敷を走り回る、あの悪魔のような鼠どもは、いつも恐ろしい獲物を探し求めていて、その結果私をこの地中の奥深くの洞窟へ引き入れようとした。
そしてその地中の奥には、気の狂ったのっぺらぼうの神ないあるらとてふが、暗闇の中で、一定の姿を持っていない二人の白痴の笛吹きの笛の音に合わせてでたらめな声をはりあげているのだ。

鼠どもは獰猛で、卑しく、粘り気のあるにかわ質のすき腹をもち、縦に割れる長細い口で、私に食らいつかんとしている。私が食らったのではない。いまいましい鼠どもめ、人間の肉の味わい方を伝授してくれる……(読み取れない字)……あど、あがいどす、ないあるらとてふ、うんぐる、うんぐる、るるる…」

しばらくそのような意味不明の文言が続いた後、最後のほうは以下のように締めくくられている。

「あれは断じて私ではない、とぜひ島のものも知らなければならない。死んだのちもなお、その足音で私を安眠させることのあるまいと思われる、あの小走りに駆け回る鼠どものやったことなのだ。屋敷の中を駆け回っては地下に潜り、屋敷中をその足音で震わせ、島のものには聞き取れない物音で私を怯えさせる、魔物のような鼠どもの仕業なのだ。鼠どもだ、壁の中の鼠どもの仕業なのだ。

鼠どもを焼き払え。私は断じて狂人などではない」

狂人の書でしかない。奇怪な姿の鼠の妄想に取りつかれた、意味不明な文字の羅列に《SANチェック》1 / 1d4

4-2 地下の探索

足音が向かった先である地下を見に行くことになり、地下へ向かう。地下の扉のカギを開けるため、必然的に安房と、調査の為NPCの倉橋もついてくる。
鼠ではないかと怯える安房が、「くろすけ」を抱いてついてくる。

階段を下りて地下1階へ踏み入れると、様子が一変している。昨日は無かったはずの大小さまざまな穴が、地下1階のあちこちに空いているのだ。
突如として現れた不気味な”穴”の群れに《SANチェック》0 / 1

部屋を探索、または《目星》

そのうちの1つ、かろうじて人が通れそうな床に空いた穴は奥に続いており、さらに地下に降りることができそうだとわかる。入り口が狭いため、一人ずつ入っていくことになる。
KP向け情報:地下1階はかつて、地下2階へ至るための入り口だった。その方法はすでに失われてしまっているが、犬神筋の者しかしらない呪文で地下2階への道を開き、地下2階の最深部で犬神を祀っていたのだ。また、食人癖を発症した者にさらわれた人間も地下2階に閉じ込められ、食われていた。

4-3 地下2階へ

中がどうなっているのか、確かめにいくことになる。本格的に探索する段になったら、安房と倉橋もついてくる。
安房はいったん「くろすけ」を地下1階においていく。この時点ではなかなかないと思うが、誰か他の探索者が猫を連れて行くかどうかをこっそりチェックしておく。

※メインイベントであるHOの発狂イベントがうまくいかない場合に、安房による食人癖発症イベントを入れたいので、保険のために何が何でも安房は連れて行ってください
※猫がいると、地下2階のイベントで若干致死率が下がります

KP向け:地下2階にあるものリスト
  • 地下1階からつながる階段(かつて使われていた地下1階の入り口と地下2階をつないでいた階段)

  • 大量の砕けた人骨とネズミの骨

  • さらった人間を閉じ込めていた檻

  • 簡易的な小屋(道具を置いたり、肉や骨を処理したりしていた)

  • 最奥に、祠と犬神の首

穴に入っていく

狭い穴をずりずりと通ると、膝立ちになれる程度の高さの洞窟に出る。光源が無いため非常に暗く、懐中電灯でも4~5メートル先しか見通すことが出来ない。
洞窟はしばらくぐねぐねと曲がりくねって先へ続いている。中の方は空気がひんやりしており、壁や床が湿っている。

しばらく進むと、人の手が入った縦穴に出る。
壁に沿ったらせん状の階段が上から続いていて、洞窟を出るとちょうど階段に降りられる。階段に足をつくと湿度が高いのに粉っぽいものがふわりと舞い、ガリ、と硬いものをいくつも踏む。黄ばんだ白っぽい、何かのかけらがいくつも落ちているようだ。
階段を上か下に向かって進むことが出来る。かなり深い。

白っぽいかけらに《目星》

砕けた白い石がたくさん落ちているが、石とは異なる質感な気がする。砕けているだけではなく、細かいノミのようなもので削られた痕も多々発見できる。

《医学》

これは人骨だと気づく。かなり砕けていて、長い年月放置されたものだと思う。骨が削られたような痕を見つけることができ、砕けた原因は劣化の他にもあると感じる。
また、人骨の他にも、小型の動物の骨が大量に混じっているとわかる。
無造作に散らばる夥しい数の人骨に《SANチェック》1/1d2

《生物学》

医学と同様、人骨の他に、小型の動物の骨が大量に混じっているとわかる。動物は小さなウサギか、ドブネズミ等であろうと見当をつけられる。
無造作に散らばる夥しい数の人骨に《SANチェック》1/1d2

この空間で目星、または階段を上に登る

上に上ると、途中で石の天井に突き当たってしまい、それ以上登れない。どうやってもここから上には出られない。

4-4 地下2階 - 広い洞窟

階段を降りきってたどり着いた地階は、広い洞窟へ続いている。湿度が高く、気温が低い。典型的な洞窟型の空気にまじって、すえた汚物のような、嫌なにおいがする。
自分たちの足音や、どこかから聞こえる水滴が落ちる音などが響いており、この先は全貌をまるでつかめないもののかなり広いと感じる。少し歩を進めると分かるが、ここもあちこちに砕けた白いかけらが落ちている。端の方に固められた白いものの山なども見つけられるかもしれない。

かなり広いので、左の壁沿い、正面、右の壁沿い、とエリアを大まかに3つに分けて探索させる。それぞれがある程度探索が済んだら、HOにイベントを発生させる。

右の壁沿い

壁際を進んでいくと、鍾乳洞の壁面のような湿ったむき出しの岩に、いくつも穴が開いている。
比較的大きな穴には、鉄格子がはまっている箇所もある。鉄格子がはまった穴はすぐそこで行き止まりになっており、中に人骨や動物の骨のかけらが散らばっている。

左の壁沿い

右の壁沿いと同様、壁面に穴があり、いくつかは鉄格子がはまっている。
また、少し進んだ壁沿いに屋根のない簡素な小屋を見つける。中は床板が敷いてあるが、広さは4畳半くらいで全員入ると狭い。

簡単な椅子、作業台、壁に様々な道具がかけられている。小屋の中では古くなった血痕など見つけるかもしれない。 SANc 0 / 1
白いかけらが人骨だと気づいていた場合 1 / 1d2

壁の道具

ボロボロに朽ちていて使い物にならない。大型の刃物やのこぎりのようなもの、大小のハンマー、蚤のような道具など、工具が多いようだ。金属部分は全て錆に覆われている。

正面

白いかけらがそこここに散らばる中をまっすぐ進んでいくが、先は見えない。

少しでも進んだ先で《目星》か《追跡》か《幸運》、またはしばらくの探索
成功で、「タコ糸のようなもの」が一本、落ちているのを見つける。片方の端は洞窟の奥の方へまっすぐ伸びているが、光の届く範囲に端は無い。
KP情報:最奥にある、犬神の首を祀っている祠から伸びている。まじないのひとつだが、特に意味はない。

糸を辿ってみる

奥の方は地面にも穴がぼこぼこと開いている。気を付けないと、大きな穴に足をとられてしまいそうだ。このあたりの穴は深く、その底はどこまで続いているか見当もつかない。

4-5 イベント:犬神の呪い

その時、全員の持っているライトが一斉に消える。不気味な場所で、自分の手すら見えない真っ暗闇による混乱のため《SANチェック》 0/1

混乱のさなか、個別チャットなどでHOを付与した探索者にPOW27との対抗ロールを行わせる。
HOが対抗に失敗した場合:HOは白昼夢を見る。4-5Aへ
HOが対抗に成功した場合:安房が誰かに襲い掛かる。4-5Bへ

4-5A:HOが対抗失敗

HOは行動不能。下記の描写を行う。

突然の真っ暗闇で周りの人間がざわつく声が聞こえた。それにまじって、どこかから、とととと…ざざざ…ざわざわ、といったような、何かが無数に駆け回っているような音が聞こえてくる。
思わず一歩後ずさったところに穴が開いていたようで、あなたは足をとられて倒れこんだ。いや、何者かがあなたを穴の中へ引き入れようとしている。おぞましさにあなたはもがくだろう。

その地中の奥深くから、どどど、ざざざと駆け回る音に加え、二人の白痴の笛吹きがむちゃくちゃで薄気味の悪い旋律を奏でているのが聞こえる。そして顔のないのっぺらぼうの神ないあるらとてふが、あなたを地中に引きずり込み、その体を無数の鼠たちに食わせようとしている。

大量の鼠たちがついに穴から駆け出してくる。無数の小動物に足を取られて右も左もわからなくなる。しかしかれらが襲い掛かる先はあなたではなく、一緒に地下へ降りてきた仲間たちだ。
昨晩、夢で見た光景が目の前で繰り広げられる。あなたの目の前で仲間が一人、今まさに鼠どもの群れにのどを食い破られ、倒れこんだ……

おぞましい夢、そして穴の底に潜む、理解の及ばない外なる神の存在を感じ《SANチェック》1d2 / 1d6
KP情報:是非発狂させたい。HOから「どういうことか」と質問があった場合、夢か現実かわからないがあなたはそういう光景を見た、と認識していると伝える。

HOは上記のように、鼠が友人たちを襲う夢を見る。実際には友人を襲ったのはHO自身だが、夢と現実の区別がついておらず、「友人が鼠に襲われた」と認識している。

HO以外の探索者への描写

フッと全ての明かりが消えてしまった。スマホなど、全ての明かりが点灯しない。光源が何もない暗がりで、何も見えない。声を出すと他の者が答えるが、HOの返事だけが無いようだ。
サッと、足元をすばやく何かが通り過ぎる気配がした。ひとつふたつの影ではない、いくつもの”何か”がざわざわとうごめいている気配を感じる。《SANチェック》1/1d2

HO以外の全員に《幸運》

もっとも低かったものにHOが襲い掛かる。HO以外は身動きが取れない状態の為、不意打ちとなる。探索者を減らしたくない場合は最も近いNPCなどでもよい。

KPはHOの攻撃《噛みつき》70%(ダメージ1d3)を振る
冴えている探索者がいて、もし猫を連れてきていたなら、攻撃をしかけるHOに猫が噛みつくためダメージを軽減してよい。襲い掛かられたものは首筋を負傷する。急所なので出目によってはダメージをプラスしてもいいかもしれない。

そう経たないうちに再び明かりがつく。
HO以外の者は怪我をした探索者と、口元が血まみれのHOを発見する。HOは攻撃したことを覚えていないので、自分が見た夢の内容を説明するだろう。”噛みついたのは自分ではなく、大量の鼠たちだ”と。

HOは自分の記憶と状況との齟齬、また口の中に広がる血の味に吐き気を覚え、《SANチェック》1/1d4
目撃した探索者は仲間を襲ったような状態のHOに対して《SANチェック》0 / 1d2

4-5B:HOが対抗に成功

安房がPLのひとり、またはNPCを襲う。ダメージはKPの裁量に任せるが、NPCを襲う場合はひん死の状態にしてもいいかもしれない。
HOは奇妙な夢を見るが、4-5Aの夢に比べて内容が曖昧で理解ができない。ただひたすらに不快な気分を味わい、得体のしれない存在が、自分のすぐそばに這いよる気配を感じる。《SANチェック》0 / 1

4-5Aと同様に、HO以外の探索者たちは何か異常な事態に陥っている予感と、足元を何かがうごめく気配を感じて《SANチェック》1 / 1d2

明かりがつくと、安房は発狂し、幻覚を発症しているかもしれない。”鼠がいた、鼠がやった”というような意味不明の言葉をぶつぶつ呟きながら、意識のないNPCの身体にしっかりとしがみついている。
猫を連れてきていた場合、安房の背にしっかりと爪を立てている。

NPCは病院へ運ばれていくだろう。この事件のあと、安房は日に日に言動がおかしくなり、また地下には近づこうとしなくなる。
この後はいったん上に戻って再度探索を行うのがスムーズで良い。そのまま地下の探索を続行することもできるが、破れ寺の情報を得ていないとEND1にたどり着くのは難しいかもしれない。

SCENE 055-1 地下2階・最深部

地下2階の探索を日を改めて行う場合、HOに再度POW対抗を発生させる。2回目以降は猫を連れていれば、HOが人を襲う前に噛みついて目を覚まさせてくれる。

落ちていた糸を辿るなどして全員が奥へと歩を進めると、しばらく歩いたのちに洞窟の終わりに差し掛かり、奥の方に古ぼけた小さな祠があるのを見つける。

祠は観音開きの扉がついており、糸をたどっていた場合は、その糸が閉じられた扉の隙間から出ていることがわかる。ただし、糸は一本ではなく、何百もの糸が扉の間から伸びており、それらは祠すぐのところで全て切れて落ちているのであった。

扉を開く

扉を開くと、赤い布が結わえてある木札が中にかかっている。無数の糸は、木札の上部から大きく垂れた赤い布に通してあるようだ。
また犬神筋の者は木札を見て、根元からぶっつりと切られた、生きた真っ赤な犬の舌が吊るされているように見える。

得体の知れない儀式の名残、またHOは、未だに生きてよだれを滴らせている舌に《SANチェック》0 / 1(HOは1 / 1d2)

祠を調べる、または目星

祠の中、かかっている札の奥に何か置いてあるのが見える。取り出してみるならば、それは蓋つきで小ぶりの綺麗な青磁の壺だ。
KP情報:舌以外の部分を焼いた骨・灰を入れた骨壺。

5-2 犬神の首

犬神の舌と骨壺をどうするかでENDが分岐する。
糸はブラフ。力の大きな犬神が犬神筋の者に害をなさないようにするため、舌だけ残して糸で呪詛を縫い留め、犬神を制御している。
ブラフではあるが、糸をむやみに切ろうとしたり、糸だけを焼こうとしたりするなど、犬神を制御するための呪詛を意図的に解こうとした場合は全員がロストする可能性があるため、END04を参考に一度は踏みとどまるためのチャンスを与えること。

赤い布と木札(犬神の生きた舌)を焼く、あるいは持っていこうとする

舌を焼くと、地下のあちこちの穴から大量の火だるまの鼠が飛び出してきて、舌を取り戻そうと襲いかかってくる。
鼠と言っても、その見た目は小さめのイタチのような細長い体をしており、横に開く口は蛇のように身体の横まで裂けた化け鼠だ。SANチェック《1/1d3》

地上へ向かって逃げる

逃げる場合、何を持っていくかの宣言を聞く。お祓いをするために必要なものは「木札と赤い布(またはそれを焼いた灰)」、「青磁の壺」の両方である。

地上まではDEX*5に3回成功すればたどり着けるとするが、もし怪我をしている探索者がいた場合は回数を減らすなどでうまく調整してほしい。DEX*5に失敗した場合1d3匹の鼠が身体に食いつき、逃げ切るまでの間攻撃(噛みつき)を仕掛けてくる。
鼠から燃え移った火で火傷しないかや、服にくっついた鼠をはたきおとせるかなど、参加した探索者の能力値に合わせてKPの裁量で難易度調整を行うと良い。
ちなみに猫をここまで連れてきていた場合、一目散に地上へ逃げていく。(お助け猫として探索者にくっついた鼠を退治してくれる猫にしてもよい)

犬神鼠

STR:2d3+2 POW:3d6+6 SIZ:3~5 HP:1d2+1 MP:10
噛みつき:30% ダメージ1d2

エンディング

END 01END1 「犬神祓い」

舌を焼いて壺に入れ、壺を神社に奉納した場合

神社で護摩が焚かれ、犬神を祓う儀式が行われる。特に立ち合いは必要ない。
安房の館に戻ってみると、地下1階に空いていた穴は綺麗に塞がっている。また、安房、HOは館に寝泊まりしても悪夢を見ることはなく、猫たちも穏やかに朝まで眠っている。 禍々しい呪いを退け、犬神を祓ったのだ。

クリア報酬

犬神を祓った:1d4のSAN値回復
NPCを含めた全員が生還した:1のSAN値回復
人肉食の発症を食い止めた:1d2のSAN値回復
クトゥルフ神話技能:HOは2%、HO以外の探索者は1%獲得

END 02END2 「渇望する舌」

壺のみまたは舌のみなど、不完全な犬神の首を神社に奉納した場合

犬神祓いは不完全に終わる。ひとまずHO、安房の人食症はおさまるが、なんとなく釈然としない気持ちが残る。HOは家へ戻ったあと、どうしても食べたい気持ちを抑えられずに購入した大量の肉を調理する。

肉が焼かれる匂いにつられてお腹が鳴り、早く食べたい…と思っていると、自分の手元にポタ、ポタと透明な液体が落ちる。いつのまにか開いていた口からだらりと舌が垂れ、肉を前にしてよだれが滴っているのだ。

自分の舌はこんなに長く、薄かっただろうか?まるで飢えた犬のそれではないか。
HOの舌は犬神の舌とすり替わってしまう。今後、犬神に成るべく頸を切られた犬のように、貪食になる。

クリア報酬

NPCを含めた全員が生還した:1のSAN値回復
人肉食の発症を食い止めた:1d2のSAN値回復
クトゥルフ神話技能:HOは2%、HO以外の探索者は1%獲得

END 03END3 「壁の中の鼠」

壺も舌も、神社に奉納しない場合

犬神を抑えていた封印が解け、館の外にもその力を及ぼすようになる。

HOは夜な夜な、自分の家のみならず、寝泊まりする場所で壁の中を走り回る鼠の足音にうなされる。駆除を依頼しても鼠は見つからず、それどころか足音はほかの者には聞こえないという。
狂人の扱いを受け、徐々に憔悴したある夜、夢の中で鼠が人を襲いついに人を食うところを目の当たりにするだろう。

HOと安房は人食症を発症。無意識のうちに、人を食って殺すようになる。それが夢かどうか、鼠の仕業かどうかは定かではないが、HOの周りでは確かに行方不明者の報道が増えることだろう。

※安房も藍島で人をさらって食うようになる。HOはそのままではいずれ連続殺人犯として捕まってしまうかもしれない。

クリア報酬

NPCを含めた全員が生還した:1のSAN値回復
クトゥルフ神話技能:HOは1d2+2%、HO以外の探索者は1%獲得
(HOは穴の悪夢を継続して繰り返し見て、神格の存在をより近くに感じるようになる)

END 04END4 「胃袋が満ちるまで」

最後の一本の長い糸を短く切る、糸だけを焼く、など、舌に縫い留められた呪詛を意図的に解いてしまう場合

犬神の力が暴走し、HOは即座に食人癖を発症、その場にいる探索者に攻撃を仕掛けることになる。
糸に触れないでおくためのヒントも少ないため、このENDに向かいそうであれば、糸を切ろうとした瞬間に全員が強い力に当てられてひどいめまいを起こすなど「なんかやばそう」な現象を発生させてもよい。

※テストプレイでは、「昔の事件の時にさらわれた人間が見た光景」つまり、”広間にあった檻に自分が閉じ込められており”、”ゴリ、ゴリ、ゴン、と小屋の方から何かを削る音が永遠に聞こえてきて”、”それがやんで足音がこちらに向かってくるのを聞き、次は自分の番だと悟った”、といった内容の夢を見せて思いとどまってもらった

それでも実行した場合の処理をどの程度厳しくするかはKPに任せる。よほどの運や何かが無い限り探索者は全員HOに殺され、生きてこの地下から出ることはない。
もはや首だけになった犬神の腹が満ちるまで、HOは食人衝動を抑えられないだろう。

全員ロスト。HO、安房のこの後の処理は任せる。

クリア報酬

なし

END 05END5 「犬神筋」

糸についてのまじないのやり方を調べて、新たな何本もの糸で舌を縫い留めるなど、犬神を祓わずに封印を補強することになった場合

正しい封印やり方を調べなおすのには数年単位で時間はかかるかもしれないが、何らかの技能で判定するなどで今すぐとりあえずの封印を補強することできれば、食人癖はいったんは収まる。
ただし、封印は十数年に一度ほどの頻度で継続して補強せねばならず、HOの子供にも脈々と犬神筋は受け継がれていくため、根本的な解決にはならない。
(安房は子供がいないため、安房家はこの代で途絶える)

HOの家系は犬神筋として、犬神の首を祀って暮らす一族となるだろう。子孫の中には、安房家の時のように、封印をしてもなお強大な犬神の力に当てられて、食人癖を発症する者が出るかもしれない。

クリア報酬

NPCを含めた全員が生還した:1のSAN値回復
犬神を祓う以外の方法を見つけ出し、食人癖を発症しにくくした:1d2のSAN値回復
クトゥルフ神話技能:固定でHOは2%、HO以外の探索者は1%獲得
また、HOと、封印の方法を調べる探索者に追加で1d3のクトゥルフ神話技能

あとがき

2018/11/11:シナリオ公開
2021/5/25:加筆修正、再公開

やりたかったこと:「私じゃない、鼠の仕業だ」と主張する狂人ロールとホラー演出(祠から伸びている糸など)

参考(元ネタ)

ラブクラフト全集(創元推理文庫) - H・P・ラヴクラフト (著), 大西 尹明 (翻訳)
描写など、かなり影響を受けています。シナリオを読んでいても楽しめると思いますので、是非原作も読んでみてください。

3年前の公開時に作った古いトレーラー画像です。

AUTHOR

近々@chika_djed

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