探索者たちが住む地域で連続変死事件が発生している。探索者たちはこの事件を食い止めることが出来るのだろうか。
SFホラー / 短編 / シティ
DESCRIPTION概要
- 舞台
- 現代日本
- 形式
- シティ
- 推奨人数
- 2人程度(1人でもプレイ可能ですが、万が一のロスト率が高まります)
- 推奨技能
- 目星、追跡
- 準推奨技能
- 医学、心理学、戦闘技能
- 時間
- 3時間ほど
さくっと嫌な気分になって終わるSFホラーです。
刑事か探偵が一人でもいるとスムーズに進行できるかもしれません。
注意事項
大塚英志原作、衣谷遊画による漫画『リヴァイアサン』二巻収録話「Genom Fever」をもとに構成したシナリオです。大筋の流れは同じですので、あくまでも二次創作であることを前提に遊んでください。
ダイス運によるロストの確率が高めに設定されているシナリオです。
KP向け情報
DESCRIPTION概要
季節は春。あなたの住む地域で1ヶ月ほど前から2週間おきに『脳みそを綺麗にくり貫かれた死体』が発見される連続変死事件が発生している。
探索者たちはこの事件を食い止めることが出来るのだろうか。
THE TRUTH真相
旅するもの/異形の寄生者
ある厄介な病気にかかった“旅するもの”が、人間の食物感染を利用して繁殖、もとい存続を続けようとしていたのが事件の真相。
彼らは最初に寄生した人間が感染していた遺伝病の影響で、寿命が長くても2週間ほどになる病気にかかってしまう。
それでも命を繋げることを望んだ彼らは、病死した男をコントロールして他の人間に脳みそを食べさせ、幼生を産み付け、2週間後の寿命を迎える前に食べさせる…といったサイクルを4回ほど繰り返していた。
連続変死事件の5件目の犠牲者となろうとしている田上は既に“旅するもの”に寄生されている。探索者に追い詰められたタイミングで本能的に生命の危機を感じた“旅するもの”は、命を途絶えさせないために探索者への寄生を試みる。
田上について
彼は路上で偶然出会った少女の誘惑に乗ってしまった。
既に別の人間を経由して寄生されていた彼女からホテルの一室で『脳みそを食べさせられる』というとんでもない目に遭い、次なる“旅するもの”の宿主として選ばれててしまう。
寄生されてからは意識がなく、目的もなくただ街を練り歩いていた。
連続変死事件、シナリオの時系列
下記に記載のない部分はシナリオ解決に直接関係がないため記載がないが、KPが必要であれば自由に設定してよい。
- 2か月ほど前
- “旅するもの”が最初の犠牲者に寄生
- 1か月半ほど前
- 変死事件の1件目が発生、“旅するもの”は脳を介して次の犠牲者へ寄生
- ~1か月ほど前
- 能見かなが3件目の犠牲者とホテル赤松に訪れる。3件目の犠牲者はその後“旅するもの”に寄生され、能見かなを次の宿主に選ぶ
- 2週間ほど前
- 3件目の事件。能見かなが3件目の犠牲者の脳を食べ、“旅するもの”に寄生される
- シナリオ開始時点
- 4件目の事件。能見かなが田上貞志を誘惑し、ホテル赤松にて脳を食べさせる
- シナリオ開始時点の翌日
- 田上貞志に寄生している“旅するもの”は探索者に追い詰められ、命の危機を感じたため探索者に脳を食べさせようと試みる
NPCNPC
田上貞志(タノウエサダシ)
STR:13 DEX:15 CON:12 APP:6
SIZ:14 SAN:0
HP:12 回避:30% ダメージボーナス:1D4
聞き耳:50%
忍び歩き:40%
ナイフ:80%
スプーン:90%
4件目の事件の容疑者。大柄で太った男。少女の脳を介して“旅するもの”に寄生された。
事件後はスプーンとナイフを携えて街を徘徊している。意思の疎通は不可能。
能見かな(ノウミカナ)
援助交際で小遣いを稼ぐ非行少女。ピンクブロンドの派手な髪が特徴。偶然にも“旅するもの”に寄生され、4件目の犠牲者となった。
ホテル赤松のスタッフ
二人組。口が軽い。
検死医の蓑輪(ミノワ)
明るい女性。任意のキャラクターと置き換えても問題ない。
HANDOUTハンドアウト(個別導入)
導入をスムーズにするためにHOの例を用意している。刑事あるいは刑事事件に関われるような立場の探索者がいると情報開示がスムーズになる。
また、このシナリオはソロプレイヤーでも遊べるように複数のHOで探索が重複している箇所が多く存在する。複数人で遊ぶ場合は記述をよく読み、探索者の行動を予測した上でバランスよく情報を分配してほしい。
HO:探偵
あなたのもとに家出少女の捜索依頼が届く。少女の親から話を聞き、聞き込みや身辺調査をすることでホテル赤松に繋がる情報を得ることができる。
HO:刑事
あなたは1ヶ月ほど前から発生している連続変死事件を担当している刑事だ。調査のため事件現場へ向かうことになる。
HO:医者
医者あるいは一般人を想定。あなたは検死医の知人、蓑輪(ミノワ)から、昨日運び込まれた奇妙な少女の死体について相談される。
共通の知人として刑事を登場させ、事件に関する意見を出し合えると望ましい。
導入
HOごとの個別導入の例を記載する。適宜描写を追加してシーンを演出し、最終的に全員が合流できるように進めるとよい。
INTRODUCTION個別導入 HO探偵
4件目の事件の発生より前。
時刻は昼頃。あなたのもとに行方不明になっている「能見かな」という少女の捜索依頼が届く。
依頼者は彼女の母親だ。聞けば女手一つで娘を育て上げたのだと自嘲気味に語ってくれる。
母親の証言
・いつから行方不明になっているか
「最後に会ったのは2週間前の朝です。私がパートに出るときにリビングで挨拶をしたきり…夜にも帰ってきませんでした」
「警察にも話したんですが……もう2週間もたつのに進展もないようで、不安なんです」
・娘について
「年は16歳です。市内の私立高校に通わせていて、部活もバイトもしていません」
「髪をピンク色に染めていて……学校からも注意されていたんですけど、本人はあれがいいって。ねぇ」
・娘の交友関係について
「学校にも相談してみましたが、行方につながる情報はないと……」
「本人からは彼氏もいないと聞いていましたが、いてもおかしくなかったと思います」
・過去に家出をしたことはあるか
「無断で外泊をすること自体は何度かありました。でも、こんなに長い期間電話にすら出ないことは初めてで……」
・不自然な点はなかったか
「時々、腕時計や化粧品なんか、不自然に高価なものを身に着けている日がありました。本人は、友人からのプレゼントだと言っていました」
一通り会話を終えると、母親は娘の写真と細い封筒を差し出して深く頭を下げてくる。
「お恥ずかしい話ですが、私達の暮らしは決して裕福なものではありません。ですから、今回の件は身代金目的の誘拐などではなく、もっと恐ろしい事件に巻き込まれてしまったんじゃないかと思っています」
「だから、どうか。僅かばかりではありますが……これで娘を捜していただけないでしょうか」
封筒の中身
封筒の中にはKPが少なくないと感じる程度の金額がおさめられている。
依頼を受ける
母親は何度も感謝の意を述べてくる。希望があれば娘の部屋を調査しても良いとのことだ。
依頼を受ける場合、足取りを追う手がかりとして「ホテル赤松」につながる情報を出したい。KPは自然な流れとして娘の部屋の調査や学校への聞き込みなどを促すとよいだろう。
依頼を断る
依頼を受けずとも、夕方頃ホテル赤松の前で様子のおかしな田上を目撃させればシナリオ本編への合流は可能かもしれない。
能見かなの部屋
古く狭い和室。小さな化粧台に化粧品がいくつも並べられ、壁には大人びたカバンや上着がいくつか掛けられている。他に目立ったものは無く、趣味らしい趣味もなかったのではないかと感じる。
部屋を調べる
壁にかけられた上着のポケットから「ホテル赤松」の広告が入ったポケットティッシュが2つ出てくる。
ホテル赤松について調べる
<図書館><コンピュータ>、あるいは聞き込みで情報を得ることが可能。
ここから少し離れた街の、駅の近くにあるラブホテルだ。画像からは建物自体が古く寂れている印象を受ける。
私立高校
能見かなが通っていた市内の私立高校。下校時間を見計らって行けば学生に聞き込みをすることが可能。
<幸運>や<目星>で判定して話しかけやすそうな学生がいるか決めると良い。
能見かなについて聞き込み
生徒たちからは以下の情報を得られる。
能見かなは2週間前から学校に来ていないこと
以前から学校に来ない日もあったこと
能見かながホテル赤松に入るところを見たことがある
彼女に関しての情報はこれ以上出てこないが、<聞き耳>で生徒たちの噂話を盗み聞くことが可能。
「くり抜き事件」の噂
「ねえ、「くり抜き事件」って知ってる?」
「友だちの知り合いのおじさんがね、頭をすっぱり切られて脳みそを盗まれちゃったんだって」
「え??なにそれ」
「脳みそ取って何すんだろ」
「くり抜き事件」の話題は相槌で流され、それ以上詳しい情報は出てこない。
☆脳みそを盗まれる
PLに犯人をミ=ゴだと思わせるミスリード。特に意味はないので描写を省いても良い。
ホテル赤松
能見かなの家や学校から離れた場所にあるため、到着時刻は夕方以降とする。
裏通りに面した寂れたラブホテル。受け付けで暇そうにしているスタッフに聞き込みをすることが可能。
KPが必要だと判断した場合は<信用>などの交渉技能を挟むと良い。
能見かなについて
写真を見せる、特徴を告げるなどすると以下の情報が得られる。
「あ?この子。たまに見たことありますよ。目立つから覚えてます」
「いつも違う男の人連れててね。まあある程度察しちゃいるんですが……お客さんですから」
行方不明の件について
家出かなんかですかねえと茶化されたタイミングで、奥から別のスタッフが何の話をしているのかと割り込んでくる。
「あ、その子ならちょっと前に来店しましたよ?」
「なんかぼーっとしてて、ちょっと妙な雰囲気でしたね」
妙な雰囲気とは
「ぼーっとして……いつもより可愛くなかったというか。化粧のノリですかね?」
☆能見かなの妙な雰囲気
能見かなは“旅するもの”の寄生によって様子がおかしくなっている。
能見かなが居る部屋や、一緒に来た人物について詳しく聞こうとしてもはぐらかされてしまう。ホテル内で揉め事を起こされては困るため、本人に話を聞くなら退店してからにしてほしい、ということらしい。
☆スタッフの協力
スタッフに名刺などを渡して能見かなが退店したことを報せてもらうことは可能。見張りの宣言がない場合、スタッフ側から提案させても良い。
一通り話を終えると、「他のお客様の迷惑になりますから」と、探索者は店内から一度追い出されてしまう。
ホテルを見張る場合
しばらく待っても人の出入りは無い。
数時間後、ホテル赤松の入り口から太った大柄な男がフラフラと出てくる。能見かなが出てくる様子はない。
<心理学>
男の顔色は悪く、目からは生気が感じられない。
<目星>
男の服にいくつか赤いシミがついているように見える。男の風貌や表情と相まってかなり不気味な様子だ。
☆赤いシミ
これは能見かなの返り血だが、遠くから見た程度では血液だと判別することは難しいだろう。
男が出ていってからも見張りを続ける場合<聞き耳>で判定する。
成功すると、ホテルの中から「ひゃあ?!」という男の甲高い悲鳴が聞こえてくる。悲鳴を辿ってみると、2階の廊下で腰を抜かすスタッフを発見できる。
視線の先を見る
彼の視線の先、開け放たれた扉の向こうのから何かがこちらを覗いている。あの顔は写真で見た能見かなだ。そう気づくと同時に強烈な違和感を覚える。床に転がる彼女の頭、眉から上の頭頂部が丸ごと無くなっているのだ。
恐ろしい事件現場を目撃した探索者はSAN値チェック[1/1D4]
スタッフの連絡を待つ場合
ホテルを見張らず、別の場所を探索するなどしていた場合、慌てた様子のホテルスタッフから電話がかかってくる。
「もしもし、探偵さんですか?今日聞き込みされてた件についてなんですけど………ホテルの部屋で……その、彼女が……死んでいて」
「どうしましょう。今から警察を呼ぶところで、あの、僕はどうしたら良いんでしょうか?」
<心理学>を振らずとも、彼が軽いパニック状態になっていることがわかる。警察の手が入る前であれば、この状況を利用して事件現場を調査することも可能だろう。
事件現場へ向かう
ホテルまでの道中、ホテルの方角から太った大柄な男がフラフラと歩いているところを目撃する。声をかけたとしても返事は帰ってこない。
<心理学>
男の顔色は悪く、目からは生気が感じられない。
<目星>
男の服にいくつか赤いシミがついているように見える。男の風貌や表情と相まってかなり不気味な様子だ。
不気味な男とすれ違った後、ホテル赤松で怯えるスタッフと合流して事件現場に入ることが可能。
事件現場
部屋の中央から廊下に頭を向ける形で少女の遺体が横たわっている。絨毯張りの床には赤い血溜まりが広がっており、部屋に荒らされた形跡などは見受けられない。
部屋の中で調査可能なのは「少女の遺体」「鞄」「ベッド」「シャワー室」の4つ。
少女の遺体
髪をピンクに染めたブレザー姿の少女。着衣の乱れはない。
<医学>で判定せずとも、すっぱり切り落とされた頭蓋骨の中身、脳みそが全てくりぬかれていることが分かる。目は見開いているが、苦悶の表情など浮かべることもなく、ただ無表情で横たわっている。
また、少女の手の近くには大きめのスプーンがひとつ落ちている。
<目星>
少女の頭頂部は派手な色の髪を乱れさせ、床の隅で潰れている。裏返せば、そこに乳白色の頭骨の一部を覗くことができるだろう。
<医学>
切り口を見ると、ギザギザと歪に削られた断面の様子から切れ味の悪い刃物で力任せに骨を削ったように見える。死因はおそらく出血多量、もしくはショック死だろう。
スプーン
カレーを食べるときに使うような市販の大ぶりのスプーン。
<聞き耳>
スプーンからどこか不愉快な生臭さを感じる。
<アイディア>
これは少女のものとは違う、男性の口臭だ。
少女の鞄
紺色のスクール鞄。中には携帯電話、財布、学生証、自宅の鍵、化粧道具などが入っている。学生証を調べれば、この鞄の持ち主が「能見かな」だと分かる。
可愛らしい財布の中には高校生のものとは思えない大金が入っている。
ベッド
少しだけシワが寄っているものの、使用感のない清潔なベッド。
<目星>あるいはよく観察をすることで、ベッドの脇に落ちた財布を発見できる。
財布の中には免許証とクレジットカード、数千円と少ない額の小銭がおさめられている。免許証には「田上 貞志(タノウエ サダシ)」の名前があり、顔写真からホテルの入り口で(あるいは来る途中の道で)目撃したあの不気味な男のものだと気づくことが出来る。
シャワー室
ごく普通のシャワー室。床や壁が湿っており、数時間前に使用した形跡があるとわかる。
<目星>
少量の黒く短い毛が排水溝に落ちているのを発見できる。少なくとも少女のものではないだろう。
☆事件現場の調査について
HO刑事が参加している場合、もう一人のスタッフに通報させて調査の途中で乱入させても良い。更にHO探偵を容疑者として濡れ衣を着せてしまっても面白いかもしれない。
卓ごとのリアリティラインにもよるかもしれないが、ある程度フィクションとして動きやすいよう自由に調整してほしい。
HO刑事が参加していなかった場合も、長く現場に留まると通報を受けた警察から任意同行を求められ、容疑者田上の目撃者として事情聴取をされることになる。
スタッフに名刺などを渡し、口止めをしていなかった場合も追って警察から連絡を受ける。目撃した内容や現場にいた理由を問い詰められ、翌日開放されることになるだろう。
☆依頼人への報告
警察に捕まっていた場合、翌日以降任意のタイミングで依頼人に報告することが可能だ。 能見かなの死を率直に伝えた場合、母親は強く憤り、前払いした報酬の返金を求めてくる。返金はしてもいいししなくても良い。
以降の処理は【共通パート】へ移る。
INTRODUCTION個別導入 HO刑事
4件目の事件の発生直後。
時刻は夜。あなたは刑事として事件現場の調査へと向かった。現場には既に鑑識や地元の警官が到着しており、彼らの報告を聞いた上で調査を行うことになる。
事件の内容
あなたは事件について以下のことを知っている。
☆連続殺人事件について
都内で1ヶ月ほど前から2週間おきに『脳みそを綺麗にくり貫かれた死体』が発見される連続変死事件が発生している。過去3件の現場では共通して大ぶりなスプーンが発見されている。
生活圏が被っていること以外、被害者3名に目立った共通点などは見受けられず、猟奇的な連続殺人事件の線も視野に入れて捜査がされている。
第4の事件現場
事件現場であるラブホテル『ホテル赤松』の一室に、眉から上がすっぱり切り落とされた少女の遺体が転がっている。(0/1D3)
絨毯張りの床には黒く乾いた血溜まりが広がっているが、部屋に荒らされた形跡などは見受けられない。
部屋の中で調査可能なのは「少女の遺体」「少女の鞄」「ベッド」「シャワー室」の4つ。
☆HO探偵の足あと
HO探偵が先に事件現場の調査をしていた場合、調査の途中で合流をさせたりHO探偵が残した不自然な痕跡を見つけさせても面白いかもしれない。KPとPL間で相談しながら決めると楽しいだろう。
少女の遺体
髪をピンクに染めたブレザー姿の少女。着衣の乱れはない。
<医学>で判定せずとも、すっぱり切り落とされた頭蓋骨の中身、脳みそが全てくりぬかれていることが分かる。目は見開いているが、苦悶の表情など浮かべることもなく、ただ無表情で横たわっている。
また、少女の手の近くには大きめのスプーンがひとつ落ちている。
<目星>
少女の頭頂部は派手な色の髪を乱れさせ、床の隅で潰れている。裏返せば、そこに乳白色の頭骨の一部を覗くことができるだろう。
<医学>
切り口を見ると、ギザギザと歪に削られた断面の様子から切れ味の悪い刃物で力任せに骨を削ったように見える。死因はおそらく出血多量、もしくはショック死だろう。
スプーン
カレーを食べるときに使うような市販の大ぶりのスプーン。
既に鑑識が指紋を採取しており、少女ともう一人の人物の指紋が付着していることが判明しているとのこと。
<聞き耳>
スプーンからどこか不愉快な生臭さを感じる。
<アイディア>
これは少女のものとは違う、男性の口臭だ。
少女の鞄
紺色のスクール鞄。中には携帯電話、財布、学生証、自宅の鍵、化粧道具などが入っている。学生証を調べる、あるいは現場の人間から話を聞くことで被害者の名前が「能見かな」だと分かる。
可愛らしい財布の中には高校生のものとは思えない大金が入っている。
<知識>
少女が通っている学校が地元の私立校だと知っていて良い。
ベッド
少しだけシワが寄っているものの、使用感のない清潔なベッド。
<目星>あるいはよく観察をすることで、ベッドの脇に落ちた財布を発見できる。
財布の中には免許証とクレジットカード、数千円と少ない額の小銭がおさめられている。免許証には「田上 貞志(タノウエ サダシ)」の名前があり、冴えない風貌の男性の顔写真がのっている。
☆証拠品
HO探偵の探索者によって証拠品が持ち出されていた場合、その証拠品はこの場で発見することは不可能になる。うまくやれば面白くなるはずなので、KPとPL間でうまく相談して処理してほしい。
シャワー室
ごく普通のシャワー室。床や壁が湿っており、数時間前に使用した形跡があるとわかる。
<目星>
少量の黒く短い毛が排水溝に落ちているのを発見できる。少なくとも少女のものではないだろう。
事件現場の捜査を終えると、仲間の一人から目撃者に話を聞く用意ができたと連絡が入る。
目撃証言
遺体の第一発見者はこのホテルのスタッフらしい。
見たこと
「夕方頃、ピンク髪の女性と大柄な男性のお客様が来店されました」
「男性の方のお客様は先に退店されまして、てっきり時間をずらそうとされていたのかと思ったのですが、まさかあんな事になっているなんて……」
「清掃のため廊下を通っていたとき、扉が開いているのを見つけました。他のお客様の迷惑にもなりますから……扉を閉めようとしたんです」
「すると扉の隙間から、あの女性と、目があったんです。彼女は床に横たわっていて、あの通り。ここから上が丸ごと無かったんです」
スタッフはそう言いながら片手を眉から上へ持ち上げて見せる。
<交渉技能>
成功すると、追加情報として能見かなが常連客であることや、彼女が噂の「くり抜き事件」の三件目の被害者と来店したことがあるという証言を得られる。
☆三件目の被害者
このホテルでの事件は初めてだが、過去の「くり抜き事件」の捜査の際に被害者の身辺調査のため警察が来たことを覚えていたらしい。
☆目撃者としてのHO探偵
もしHO探偵が事件現場で合流している場合は処理を統合すると良い。
以降の処理は【個別導入 HO医者】あるいは【共通パート】へ移る。
INTRODUCTION個別導入 HO医者 / 一般人
4件目の事件の翌日。
時刻は昼。あなたのもとに知人の検死医である箕輪という女から連絡が入る。なんでも、昨日の夜に運ばれてきた遺体に大変興味深い点があったため、誰かに話を聞いてほしいとのことだ。
話をする場所は彼女の職場の食堂などが良いだろう。部屋には窓がついている。
☆守秘義務
一応、HO刑事以外の探索者には被害者である能見かなの個人情報のみ伏せて話す。ある程度口を滑らせても問題はない。
遺体の概要(知人用)
箕輪は「昨日運ばれてきた子の話なんだけれど」とにこやかに語り始める。
「彼女、眉から上が骨ごと切り取られてて。中にあったはずの脳みそがごっそり無くなっていたの」
「明らかに猟奇殺人なんだけれど、おかしな点が2つあってね」
「まず彼女。拘束されたあとや乱暴をされた跡も何もなくて、薬物反応もなし。つまり「無抵抗のまま」「頭部を切り落とされた」可能性が高いってこと」
「おかしいでしょ?もう1つはね…」とあなたの様子を見ながら「唾液」の件について話しはじめる。
遺体の概要(HO刑事用)
被害者は能見かな。事件現場から離れた街の私立高校に通っていた女子高生で、1週間ほど前に母親から捜索願が出されていたとのこと。
死因は失血死で間違いなく、死亡推定時刻は昨日の14時。頭の傷の他に目立った外傷はなく、拘束や乱暴をされた形跡もない。
加えて薬物反応なども検出出来なかったことから、遺体の状態からは「抵抗をせずに」「頭部を切り落とされた」と推測出来るとのことだ。
「まったく常軌を逸している!」と付け加えられる。
あなたの様子を見ながら「唾液」の件について話しはじめる。
頭の中の唾液
脳が抜き取られた頭骨の内側に、人間の唾液のようなものが付着しており、現在DNA鑑定に回しているとのことだ。
嫌な想像をしてしまった探索者はSAN値チェック[0/1]
また、2週間前に発生した事件でも被害者の頭の中に唾液が残されていたことが分かっており、こちらも合わせて検査をしているところだという。
検死医の雑談
被害者の頭の中の唾液や現場にあったスプーンから『被害者の脳が食べられた可能性』があるとして、クールー病という病気を教えてくれる。
<オカルト>に成功した場合クールー病についての知識を持っていて良い。
[クールー病]
パプアニューギニアの風土病。プリオン病の一種。感染源として、原住民に伝わる喰人儀式が原因ではないかと推測されている。
<医学>
プリオン病、正式には伝達性海綿状脳症に関する知識を持っている。
[プリオン病]
伝達性海綿状脳症(でんたつせいかいめんじょうのうしょう)。
進行性の脳の変性疾患であり、プリオンと呼ばれるタンパクが異常な形態に変化することで発生する病。主に動物に発生するが、人間にも症例が存在する。
この病には根治的な治療法がなく、通常は症状が現れて数カ月から1~2年で死に至るとされている。
「もしかしたら犯人は脳を食べたくなる伝染病なのかもね」
「今回は容疑者の顔も割れてるらしいし、その人の脳を調べることができれば……何かわかるかもしれない」
箕輪はそこまで話すと、満足気に仕事へ戻っていこうとする。
☆窓の外
もしPLが一人だった場合、箕輪との会話中に窓の外にいる田上を見つけさせ、箕輪を連れて共通パートへ移行しても良い。
以降の処理は【共通パート】へ移る。
共通パート
4件目の事件の翌日。
時間帯は問わない。町中を歩いていた探索者は、横断歩道の向こう側に、傾いた姿勢で進む様子のおかしな田上を目撃する。
<目星>
男は片手にスプーン、反対の手にナイフを持って歩いているようだとわかる。大変不気味だ。
田上はフラフラと予測のしにくい歩き方をしているため、見失わないためには<追跡>で判定する必要がある。
3回続けて成功することで、見失うことなく【クライマックス】で田上を追い詰めることが可能。
<追跡>に失敗した場合は、彼を見失う代わりにランダムに田上を目撃したNPCと遭遇させる。3回追うことが出来れば【クライマックス】へ突入可能。
ランダムNPC
街角の占い師、ホームレス、キャッチの若者など、好きなNPCを登場させてほしい。
自前の探索者を目撃者として登場させても面白いかもしれないし、最悪ここで同行者を増やせばロスト率が下がるかもしれない。
以下は描写の例である。
例:街角の占い師
田上を見失ってしまったあなたに、突如背後から声がかかる。
声の主は紫のローブを纏った老女のようだ。首から台座をぶら下げており、台座から垂れる札に「占い1回800円」と書かれている。
「アナタ。何か大切なものを探しているようですね……」
「まずは1回800円で、大切なものをお探ししますよ」
<値切り>で500円までまけてくれる。
お金を払う、あるいは他の<交渉技能>で田上の行き先を教えてくれる。
「あなたが探している方はあの路地を右へ走っていきました。さあ急いで……また見失ってしまいますよ」
例:ホームレス
田上を見失ってしまったあなたに、突如道の脇から声がかかる。
声の主は髭の濃い老人のようだった。身なりやふるまいからここに住むホームレスなのだろうと想像できる。
「あんた、さっきの男の知り合いか?」
「あいつ俺の荷物を踏みつけて行きやがって……とっ捕まえてきてくれ。弁償させにゃならん」
老人はあっちに行った、とすぐに田上が行った方角を教えてくれる。
例:キャッチの若者
田上を見失ってしまったあなたに、突如横のビルの入り口から声がかかる。
「あの?もしかして事件的なやつッスか?」
軽く事情を説明すると、とても嬉しそうに情報を提供してくれる。
「エッ!?マジ!?それはパネェっすわ」
「さっき明らかヤベー奴がそっちの通り行ったんで。はやく追っかけないとヤバいッスよ??頑張ってください!ね!」
☆追わない場合
HO探偵は田上を追う動機がかなり薄いため、追わない選択をとるケースも考えられる。その場合はホームレスや誘導用NPCを登場させて追うように仕向けると良い。
それでも追わなかった場合は【エンディング】処理へ移行する。
クライマックス
時刻は夕方頃。不規則な歩き方をしていた田上が、路地を進んでひと気のない廃ビルの階段を突如猛スピードで駆け上がっていく。
慌てて後を追うと、開かれたビルの屋上に田上は立ち尽くしていた。
屋上
屋上には田上一人しかいない。顔は逆光のため見えづらいが、探索者たちの方をじっと見つめていることははっきりと分かる。
「ねえあなた、わたしを食べませんか」
「おれ、うまいですよ」
彼はニタニタと不気味な笑みを浮かべながら、己の頭にナイフを切り込ませた。ナイフはゴリゴリと男の頭をなぞり、一周したところでガポリと蓋を開けて中身を露にする。
プルプルと膨脹した海綿質の脳を見せつけ、男はただ笑っていた。[1D2/1D6]
<心理学>
男は明らかに正気を失っているが、何かしらの目的意識を持って行動していることだけは理解できる。
彼は頭からスプーンで一口分すくいとり、目の前の探索者に“それ”を向けてくる。
☆ターゲット
複数人いる場合は優先的にAPPの高い女性を狙う。該当者がいない場合はダイスでランダムに決定する。
甘美なるもの
「おれの脳、食べてください。さあ、おいしーよ」
その醜悪で不気味な光景と、目の前に突き付けられた“それ”の姿はあなたに吐き気を促すだろう。だが、それと同時にあなたは鼻孔をくすぐられる。無意識に喉すら鳴らしてしまった。信じられないことに、その人間の脳みそは、あなたにはとても甘美なものに感じられるのだ。
対象にされた探索者は<POW×3>で判定する。
☆好奇心補正
あらかじめ<目星><聞き耳>などでスプーンの上の脳を調べ、意識を向けていた場合はPOW判定にマイナス補正をかけて難易度を上げると良い。
POW判定に失敗
探索者はそのスプーンを受け取り、“それ”に夢中でむしゃぶりついてしまう。
スプーンが空くとそのまま男に飛び付き、彼の頭頂部に顔を突っ込みベロベロとバケツプリンを夢中で食べる子供のように食らいついてしまう。
そんなおぞましい光景を見た周囲の人間はSAN値チェック[1D3/1D6]
探索者は“それ”を食べたことで“旅するもの”に寄生されて正気を失ってしまう。
2週間後には次の犠牲者に自分の脳みそを食べさせてしまうことだろう。ロスト。
☆救済措置
どうしても探索者を止めたい場合はDEX対抗ロールで判定して<戦闘技能>でダメージを与えることで正気に戻すことができる。
<交渉技能><精神分析>はこの場では役に立たない。
POW判定に成功
手からスプーンが滑り落ち、自分はなんて恐ろしいことをしようとしていたのだ、とハッとする。
男を見ると、彼は悲しそうな表情を浮かべてそのまま死んでいた。
エンディング
END 01“それ”を食べた
探索者は6件目の犠牲者として、2週間後に何らかの事件を起こしてから死に至る。
もしくはその前に優しい仲間が処分してくれることだろう。
END 02“それ”を食べなかった
男の死を見届けると、あの不可解な連続事件は2週間後再び起こることもなく、ぷっつりと途絶えてしまう。
後に彼の脳みそを調べた検死医は、彼がプリオン病のような、何かしらの食物感染型の遺伝病にかかっていたのではないかと推測する。
そして、解剖した彼の延髄に何かしらの寄生生物の死骸が埋まっていたことをそっと教えてくれるだろう。
END 03事件を解決しなかった
田上を追わなかった探索者は、2週間後に5件目のくり抜き事件の報道を耳にする。被害者はあの田上で、容疑者として報道されているのは能見かなの母親だった。
生還報酬
事件を解決して生還した
SAN値回復 +1D6
差し出されたそれ”を食べなかった
ターゲットにされた探索者、また食べそうになったところを阻止した探索者はSAN値回復 +1D3
おわりに
以前pixivで公開していたシナリオのリライトです。かつてオフセッションで回したときにはどうにかなっていたものの、改めて読んだときに中身も繋ぎもスカスカでセルフSAN値チェックをする羽目になりました……恐ろしい。
かなり短いお話なので、アドリブ多めなシティシナリオのKP練習に丁度いいかもしれません。
2016/8/16:シナリオ公開
2021/7/30:加筆修正、再公開