カラヴィンカの婚礼

「永訣の朝」で特定のエンドにたどり着いた場合に回せるキャンペーンシナリオ。
タイマン / 短編 / クローズド

DESCRIPTION概要

形式
クロースド
推奨人数
1人(KPCとのタイマン)
推奨技能
基本的探索技能
時間
1~2時間

KP向け情報

INTRODUCTIONはじめに

舞台
極楽浄土
前提条件
「永訣の朝」でEND1、2またはEND4に到達した探索者であること

「永訣の朝」の救済用シナリオ。
探索者はカラヴィンカの婚約者となってしまった自分の妹弟、あるいは大切な人を取り戻すため、黄泉比良坂を駆け登る。

※この婚約者は未成年でなければならない。
※探索者は婚約者に「結婚式に呼びたい特別な人」として選ばれた人間である。
※戦闘は非推奨。

やりたいこと

黄泉返りオルフェウスイエーイ!!

シナリオ規約 》

BEFORE INTRODUCTION導入の前に

探索者はあらかじめ、「死者の国に嫁いでしまった婚約者を取り戻す」という目的を持って様々な下調べをすることが出来ます。
「見るなのタブー」や死者の国の情報など、あらかじめ学んでいる前提でシナリオが組まれておりますので、PLに情報を前もって知らせていただけますよう、お願いいたします。

導入

探索者は極楽浄土へ召喚される。部屋に一組の男女が入ってきて初めて、それがあの悪夢の続きだと理解できるだろう。
「やあやあ、お義兄さん/お義姉さん/○○さん。よくぞ来て下さいましたね。本日お呼びしたのは他でもない、私達夫婦の門出を祝うため、親族の代表者一名様にぜひお祝いの言葉をいただくためでございます。」
美しい鳥の鳴き声の様な不思議な声色で話すその人物は、艶やかな多色の着物をずるずると引きずり、玉虫色の羽衣を揺らしながら語りかけてくる。
着物の裾からは孔雀の羽根の様なものが覗いている。

◇迦陵頻伽(かりょうびんが)
カラヴィンカ。極楽浄土に住むと伝えられる、上半身が人で下半身が鳥の伝説上の生物。その声は形容しがたいほどに美しく、聴く者を魅了してしまう。美形の花婿ないし花嫁。
死の象徴であり、絶対的な存在であるため、羽衣を奪われても婚約者(探索者の妹 / 弟)は惹かれ続ける。
真の姿を見て(1/1D6)

朱や金で縁取られた建物内では、常に鈴や太鼓、笛の音が鳴りつづけており、かすかに念仏のような声も混じって聞こえる。
美しくも不気味なその空間に召喚されてしまったことにより、SANチェック(0/1D3)

(アイディア/聞き耳)

聞こえてくるのは祭囃子と説法であることがわかる。

探索者は美しい礼服を身につけている。
KP情報(それぞれの趣味に合わせて良い。基本的に結婚式に招待された時の服装をイメージするといい)

本編

SCENE 01篭の間

カラヴィンカとの婚約を果たした人物は、純白の白無垢/紋付袴の礼装で、肩から美しい《羽衣》を羽織っている。話し掛けてみると、受け答えはするもののどこか心のない様子だとわかる。

(心理学)

幸せそうだがどこか上の空な様子で、正気ではないと感じる。

(歴史/知識半分)

竹取物語に登場する、心を奪う天の羽衣を連想する。

☆《天の羽衣》

七色の輝きを持つ、白く美しい薄布。婚約者の心を奪ってしまうアーティファクトであり、これを身につけている限り、式場から動こうとはしない。

カラヴィンカが手を叩くと、奥に控えていたであろう従者たちが次々と酒を注ぎ、舞を披露する。豪勢な食事や鮮やかな果実を並べ、ぜひ食事をとるようにと奨められるが、不思議と食欲は沸いて来ない。
カラヴィンカとその婚約者は、椀の中の柘榴の実をおいしそうに食べている。

会話する

二人とも世の理から離れた思想を持っているため、理解しあうことは難しいだろう。
カラヴィンカは上位存在であり、探索者が妹を嫁に差し出すことはむしろ探索者にとって喜ばしいことだと考えているかもしれないし、婚約者として座っている妹も、羽衣の効果で現世の生き方を忘れ、ここで美しい夫と楽しく暮らしていくことが幸せだと思っている。

(歴史/知識半分)

ヨモツヘグイという伝承を知っている。

☆【黄泉竈食ひ(よもつへぐい)】

黄泉の食事を摂ってしまうと、生者の世界に帰れなくなってしまうという伝承。

(目星/よく見る)

多様な果実の中にはいっそう輝く《柘榴》《林檎》《桃》《葡萄》があり、なぜだか《タケノコ》も混じって並んでいる。 KP情報(柘榴と林檎は無意味なブラフなのでなくても良い)

☆《果実》

無意味な戦闘を避けるために必要なアイテム。タケノコと葡萄は黄泉醜女(よもつしこめ)に、桃は黄泉軍(よもついくさ)にあげることで無力化することができる。
桃のみは原典に従い坂で見つけさせても良い。

(アイディア)

探索者は婚約者が手にしている椀に見おぼえがある。雪を掬って食べさせた、あの陶の椀だとすぐにわかるだろう。

☆《比翼連理の器》

婚約者が大切に持っている椀。カラヴィンカとの婚約の証で、これを持ち帰ってしまうと現世で再度カラヴィンカが迎えに来てしまう。婚約者はよほどの説得を受けない限りこれを手放してはくれないだろう。
この世界で割ろうとしても、すぐに割れる前の状態に直ってしまう。

探索者は「ぜひ、門出の贈り物には楽器の演奏をしてください」と、婚約者から《小さな笛》を渡される。

小さな笛

美しい彫刻が施されており、高価なものだと感じる。

(音楽/知識半分)

試しに吹いてみると、初めて奏でるにも関わらずとても美しい音色が出る。
KP情報(三つ首の獣対策。吹いても音が出るだけ)

一通り話が終わったなら、カラヴィンカは準備があると言い「ニッ」と笑って従者と共に部屋の外へ出ていく。
「さて、私は少々会場の準備をしなければなりません。式のときまで、親族同士ゆっくりくつろいでいてください」

(心理学)

非常に機嫌が良く、油断しているとわかる。

説得

探索者はここで婚約者の羽衣を奪い、説得する必要がある。羽衣を身につけている限り力づくでないとその場から動くことはないが、一度奪えば感情が蘇り、ためらいながらも説得に応じてくれるようになる。 ここでの説得は交渉技能でもロールでも問題ない。

☆【婚約者の恋心】

婚約者となってしまった人物は、極楽浄土を心の底から居心地のいい場所だと感じ、心の底からカラヴィンカを愛してしまっている。その恋心は羽衣を奪おうとも、椀を捨てようとも冷めることはないが、それ以上に心を動かしてあげれば問題はないだろう。

SCENE 02廊下

竈の間を出ると、長い廊下が左右に伸びており、右手には『披露宴会場』と書かれた看板。左手には曲がり角、曲がった先には裏口がある。

(聞き耳)

右手からは大勢の人の気配、やんややんやとにぎやかな声が聞こえる。
KP情報(右手の方へ行ってしまうと、逃げ出そうとしていることに気づかれてしまうかもしれない。行こうとしたらアイディアを振らせて、嫌な予感がするとして行かないように誘導する)

裏口の方へ行く

裏口の戸には『猛犬注意』と書かれた紙が貼られている。戸にはすりガラスの窓が付いており、外は夜なのだとわかる。

(聞き耳)

獣の鼻息と、風で木が揺れる音が聞こえる。

SCENE 03裏口

夜の闇の中、屋敷の裏手から出たところにボロい小屋らしきものが一つ見える。中にいるのは番犬である三つ首の獣だ。
KP情報(これは楽器《小さな笛》を使用することで眠らせることができる)
声は青銅の様に響き、悍ましい三つ首と蛇の尾をもつそれは、まさしく伝説上のケルベロスそのものだ。SANチェック(1/1D4(眠っている場合は1D2))

◇三つ首の獣

HP:40(装甲3) DEX:4d6 噛みつき:50% 移動を含まない3回行動。
KP情報(忍び歩き、隠れる等での回避も可能。なるべく自由にやらせて良いが、普通に戦うことを選んだのなら負傷は避けられないだろう)

門を出た先にはうっそうとした竹林があり、一本砂利道が通っている。屋敷から届く明りのおかげでどうにか道筋が見えるようだ。

(目星)

かなり遠いが、道の先に大きな川が見える。

ここで探索者は(聞き耳)を行う。
成功した場合、背後からドカドカと複数の足音が近づいてくるのがわかる。カラヴィンカの従者である黄泉醜女たちが追っ手として追跡してきたのだ。
追われる緊張感からSANチェック(0/1)

◇黄泉醜女(よもつしこめ)

カラヴィンカの従者で追跡者。人数は2D2人。
鮮やかな衣装を着ているが、それぞれ潰れたカエルや魚の様な醜い姿をしている。振り返り、その姿を見てしまうとSANチェック(0/1D4)
非常に貪欲な性質を持ち、食欲のためなら職務も放棄してしまう。果実の中でも葡萄、タケノコが好物。

葡萄、タケノコを投げる

葡萄、タケノコを投げると彼女達は追跡をやめる。
「「ブド、ブッブドォウオオウオウ~!」」「「タケノコッ タケッタケノオ~ォッ!」」
投げないなら、DEX3D6との対抗ロールを行う。万が一負けてしまった場合戦闘処理を行うこと。
KP情報(なお、このシナリオは戦闘は非推奨であるため、処理は各KPにゆだねることとする)

SCENE 04三途の川

ここから来た道を振り帰ってみると、赤々と鮮やかに輝くカラヴィンカの屋敷が見える。

(心理学)

連れてきた婚約者はどこかさびしそうな表情をしている。

小石が敷き詰められた広い川に橋はかかっておらず、しばらく歩くと小さな船屋が建っているのが見える。船屋の脇には木の看板が立ててあり、そちらを見ると『渡り賃 一人六文銭』と書かれている。

(目星)

裏に子供の落書きの様な文字で『からだはあらった?』と書いてある。

(歴史/知識半分)

禊の伝承を知っている。
☆【禊】
婚約者は既に黄泉の食事を摂ってしまっているので、川での禊で穢れを祓わなければならない。禊は川に入って「全身を」洗うことで完了する。
KP情報(手だけ、足だけなど全身を洗わなかった場合、エンディング分岐に影響がある)

川の水は黒々としているものの、掬いとれば非常に美しい水だとわかる。口にすると、するすると身体から汚いものが抜けていく感覚を覚える。
舟屋の中に呼びかけると、醜くしわがれた老夫婦が顔を出す。
「おやおや。逃避行ですかな、御二人さん。ヒッヒッヒ」

◇懸衣翁(けんえおう)・奪衣婆(だつえば)

川渡りの駄賃受け取り係兼船守。銭がない場合衣服などを奪う。守銭奴なので代金を払わない人間には容赦しないが、大人しく高価な品を引き渡せば心強い協力者となってくれる。
KP情報(お助けヒントキャラなので情報を出すときに上手く使うこと)

探索者たちの様子を見透かして、船で川を渡るための駄賃《六文銭》を要求してくる。これに応じない場合、駄賃の代わりだと言って探索者たちの服を老婆が剥ごうとしてくる。
KP情報(船には乗らなくてもいい。泳げば禊の処理を省略することができるが、ヒントは少なくなる)

(戦闘)

船を盗もうとした場合、懸衣翁・奪衣婆との戦いになるが、時間をかけてしまうと更なる追っ手が来るのでアイディアを振らせること。

(目星)

なんとか川底を歩いて渡れそうな深さの場所を見つける。

(アイディア)

婚約者の持つ椀や羽衣、笛が六文どころの価値ではないと気付く。

アーティファクトを船賃として出す

老夫婦はすぐに態度を変え、へこへこと舟の用意をしてくれる。船守は船を出すと、二人を茶化しながら払ったアーティファクトの数だけアドバイスをくれる。
KP情報(物をすべて捨てさせるため。)

船守のアドバイス
  • こちらで得た物は全て捨てること。衣服も例外ではない。

  • ものを食べてしまったなら禊が必要なこと。

  • 追跡者から逃れるために果実を使うこと。

  • 闇の先で、決して振り返ってはいけないこと。

広大な川の先、対岸は深い闇をたたえており、探索者の目ではいかに目を懲らしてもその様子を窺い知ることは出来ない。
後もう少しで岸に着くというところで、『これより先、決して振り返ってはならない』とあなたに囁くような声が聞こえる。

SCENE 05黄泉比良坂

川を渡った先、あたりは一面真っ暗で何も見えない。ひんやりとした空気の中、探索者は不安感に襲われる。

(アイディア)

もちろん後ろ手に引く大切な人の姿も、声でしかその存在を確認することは出来ないのだと気付く。

(聞き耳)

来た方角の空から、ひときわ美しく、怒気を孕んだような鳥の歌声が聴こえる。

ここで探索者は追加で(聞き耳)を行う。
成功した場合、背後からバシャバシャ、ドドドと大群の足音が近づいてくるのがわかる。カラヴィンカの従者である黄泉軍たちが追っ手として追跡してきたのだ。
追われる緊張感からSANチェック(0/1D2)

◇黄泉軍(よもついくさ)

カラヴィンカの従者で追跡者。人数は1500ほど。鮮やかな鎧を身につけ、醜く大きな瞳をギョロギョロと覗かせる。小さな鬼のような姿。振り返ってしまった場合、その大群を見てSANチェック(1/1D6)
非常に貪欲な性質を持ち、食欲のためなら職務も放棄してしまう。桃が好物。

桃を三つ投げると争いが起こり、追跡をやめてしまう。
KP情報(万が一桃がなければ、(幸運)で輝く桃を足りない数だけ与えて良い)

(聞き耳)

1500もの軍勢が、たった3つの桃を奪い合い、争い始める音が聞こえる。

最後にカラヴィンカが翼を広げて追ってくる。美しい声で婚約者の名前を呼びながら、バキバキと何かを薙ぎながら飛んでいるようだ。ゴウゴウと風を切る音やその気配から、すぐ背後に迫るその存在の大きさを探索者は改めて感じることになる。
異形の追跡者への恐怖からSANチェック(1/1d3)

探索者に迷いがなければ無事逃げきることができる。が、婚約者は迷いを絶たれていなければ、愛しいカラヴィンカを想い振り返ってしまう。

☆【振り返り】

この世とあの世の境、何も見えない暗闇においては決して振り返ることは許されない。
探索者が振り返れば、婚約者ともろともにあちら側へ引きずり込まれてしまうだろう。婚約者が振り返れば、二度と現世に戻ることはかなわなくなる。

探索者ははるか先に見えたかすかな光りを目指して、婚約者の手をしっかりと握り、坂を一気に駆け登る。

(聞き耳)

坂を上りきったところで、チン、と脇道に置かれた道祖神の方から小さな音が聴こえたような気がした。
KP(ニャルラトホテップによるいたずらです。意味は全くありませんが、最後にPLを不安にさせることができます)

SCENE 06黄泉返り

気がつくとそこは布団の上だった。どうやら看病したまま眠ってしまっていたのだと、すぐに気付くだろう。
探索者はついに、極楽浄土…いや、あの恐ろしい黄泉の国からの帰還を果たしたのだ。(SAN回復1D3)

エンディング

END A「黄泉返りの法」

傍らにはすやすやと、気持ち良さそうに大切な人が眠っている。
やがて目を醒まし、とても気持ちのいい夢を見ていたことと、あなたが来たところで夢が終わってしまったのだと機嫌を悪くしながら語るだろう。
ただ、その手はしっかりと握られていた。
(無事に婚約を破棄し、四諦(したい)の国へと帰還する。ハッピーエンド)
(SAN回復1D6)

END B「反魂の法」

(条件:アーティファクトの破棄、禊をしない)

だが、あなたはすぐにおかしなことに気がつくだろう。それは人の姿によく似ているものの、顔色は悪く話し掛けても心がない。声は笛の様に細く単調な様子である。
そう、あなたはかの罪をおとしていくことができなかったのだ。婚約者は半分は人、半分は死人として生きていくことになる。

END C「罪人に死を」

(条件:戦闘での敗北、振り返ってしまうなど)

逃亡者たちはもろともに地獄に落ちて死ぬ。探索者、婚約者ともにロスト。

おまけ

ネタとしてはイザナギメインでオルフェウス、かぐや姫、ペルセフォネ、エリザベート、西行MIX。

2017/3/20:シナリオ公開
2021/5/25:加筆修正、再公開

AUTHOR

あかねこ@RedAkanekoCat

シナリオ、画像作成を担当。

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