青女の洞

季節は冬。探索者たちは東北の小さな村「猪高村(いだかむら)」への旅行の計画を立てる。
雪山 / 中編 / ハリウッド

DESCRIPTION概要

推奨人数
2〜3人
推奨技能
運転技能(自動車)、目星、聞き耳、図書館
時間
4〜6時間

時期は11月。もうすぐ冬も本番となろうとしていた頃、探索者たちは旅行の計画を立てる。
そこで、旅行サイトにも載っていない穴場スポットを発見する。「猪高村(いだかむら)」という東北の方にある小さな村だった。

そこは夏を除いた10~5月の間雪が降るという標高の高い村であり、雪景色ツアーや絶品郷土料理が楽しめるという。

シナリオ素材について

「青女の洞」トレーラー画像を含め、当ページに掲載しているシナリオ用素材について、「青女の洞」のオンラインセッションでルーム素材として使用して構いません。再配布やその他のシナリオのセッションでの使用はご遠慮ください。

シナリオ規約 》

KP向け情報

THE TRUTH真相

猪高村(いだかむら)は伝統的に山の神ことイタクァを信仰し、それを鎮めるために生贄を捧げている小さな村である。
生贄に選ばれ、釜下(かました)家に泊まることになった探索者は、初日の夜眠っている間に、生贄を閉じ込めておくための深い穴の中に運ばれてしまう。

雪深い山、そして到底自力で出ることはかなわない穴の中で寒さと飢えに体力を削られながら、探索者は「歩む死」イタクァとのカーチェイスを逃げ切り生還することを目指す。

NPCNPCと登場神格

運転手 / 関 浩二(セキ コウジ)

物腰柔らかそうな初老の男性。にこやかに挨拶してくれる。猪高村についての歴史や簡単な観光地の解説をしてくれる。
釜下家に泊まることになった探索者たちが、生贄としてイタクァに捧げられてしまうことを知っている。
あまり生贄の風習に肯定的でないため、探索者たちを可哀想に思い、また村の風習に加担していることを後ろめたく思っている。

釜下政二、トミ子

探索者たちが泊まることになる民泊の主人と、その妻。
政二は穏やかそうな男性で、トミ子より少し年上に見える。トミ子は朗らかで綺麗な女性で客の面倒や食事の支度など基本的な給仕をしてくれる。
ふたりは民泊に泊まる観光客から生贄を選んで薬で眠らせ、雪の洞の中に置き去りにしている。

イタクァ / 歩む死、怒れる嵐の神

基本ルールブックP.207参照。
常に宇宙のあちこちを飛び回っているが、猪高村にある青女山から凍結した湖を通り道の一つにしており、不定期に顕現する。
村人はイタクァが歩むたびに出る犠牲者と村への被害を抑えるため、湖に贄を捧げる洞をつくった。さらに湖と猪高村の間に長い期間をかけて大きな壁を建設して、村と湖とを断絶した。

導入

探索者たちは皆、知り合い同士である。もうすぐ冬が本番になろうとしている11月。温泉にでも入りに行こうということで旅行を計画する。
様々な旅行サイトを比較し楽しく目的地を決めていたところ、とある観光地がヒットする。

[猪高村]

「いだかむら」と読むようだ。旅行サイトに掲載はなく、村のホームページがヒットした。
数多くの温泉、絶品の郷土料理、美しい雪景色、そして設備の整った民泊…小さな村であるためか、宿泊料金も安くかなりの好条件だ。
探索者たちはこの村に行こうということで話がまとまる。

猪高村に関する情報

  • 東北の方にある小さな村。

  • 夏を除いた10~5月の間雪が降るという標高の高い村であり、雪景色ツアーや絶品郷土料理があるという。

  • 村起こしのために観光地化を目指し、村民が団結して観光地を作りあげているらしい。

  • 観光地として「猪高村歴史資料館」「源泉温泉」「凍てつく猪高滝」などがある。

  • 雪道を走れる車のレンタルや、ツアータクシーを申し込める。

民泊の予約

事前に民泊を予約する場合でも、到着してから案内所で予約する場合でも宿泊場所は釜下家になる。
釜下家に宿泊してしまった旅行者が生贄として選ばれるためだ。

猪高村について<図書館>

猪高村は猪高山という大きな山の中にある村だが、それとは別に「青女山」という山が近くにあることが分かる。
観光地として説明はないが、猪高村の地理を調べた際に「青女山と呼ばれている山がある」という情報だけ得る。具体的な場所なども不明である。(そもそも周りも山だらけである)

本編

CHAPTER:01猪高村へ

新幹線を乗り継ぎさらにバスに乗り、だいたい3~4時間程度で猪高村に到着する。
移動している最中、村に近づくにつれ景色に雪が混ざりだし、到着する頃には完全な雪景色になっていた。

道路でさえもはや車線は見えず、雪かきはされているものの降り積もって固まった雪があちこちに積み上げられている。
猪高村入り口というバス停でバスは停車し、探索者たちはついにその村に降り立つ。

バスを降りる際に運転手が「目の前に案内所ぉあっから、そこでツアーさ申し込めばはえーっから。楽しんでな」と笑顔で声をかけてくる。

案内所

自分たちと同じような観光客が何組かおり、カウンターで従業員と話している。案内所はストーブが焚かれており心地良い暖かさだ。
ちょうど前の旅行客の受付が終わり、探索者たち一行に声がかけられる。

「ようこそいらっしゃいました!遠かったでしょう」と笑顔で暖かいお茶を出しながら従業員が出迎えてくれる。
案内所では民泊の予約はとれているかの確認と、雪景色を楽しみたければ、ここでツアーを申し込めると勧められる。

[雪景色ツアーとは]

猪高村では様々な絶景を楽しむことができるが、雪の降り積もった山道であるため危険も多い。
ツアーに申し込むと案内所が管理しているタクシーサービスを利用することができる。
タクシーとは言え大きめの乗用車であり、後部座席は向かい合い座席のゆったりとしたスペースが確保されているため、観光に最適だということだ。もちろんツアーなので観光地の解説などもしてくれる。

CHAPTER:02ツアーのはじまり

申し込みが完了すると、すぐに案内ができると言って外に案内される。案内所の横に何台か車が停められており、運転手が探索者たちを待っていた。

運転手 / 関 浩二(セキ コウジ)

物腰柔らかそうな初老の男性。にこやかに挨拶してくれる。猪高村についての歴史や簡単な観光地の解説をしてくれる。
探索者から質問があれば以下のような回答を用意している。

Q.猪高村の猪高ってどういう意味?
A.イダカってのは神様の名前なんだって言い伝えがあるなあ。

Q.言い伝えとは?
A.この地を昔から守ってくれてる神様だってことだあ。じぃさんばぁさん達はいつも雪の被害が大きくなりませんように~とか、村が栄えますように~とかお願いしてんよ。

Q.「青女山」という山があるらしいが知らないか?
A.あぁ~勿論知ってるよ。しっかしここからじゃ遠いっから、観光できるような場所ではあんめなぁ。

Q.そこには何があるの?
A.なぁんも。ましてや散々雪が降ってて入れねえよ。

Q.どこにあるの?
A.教えね。行かれたりでもしたら大変だかんよ。

凍てつく猪高滝

雪の積もった雪道を車で走り、道すがら絶景を見下ろしながら車は走っていく。目的地までの道のりで設置されている休憩所で暖かいご飯などを食べながら、「猪高滝」に到着する。

所々凍り付いている川を辿るようにハイキングコースをしばらく歩くと、目の前に大きな滝が現れる。その滝は見事に凍りつき、陽の光に照らされキラキラと輝いていた。今にも動きだしそうな迫力を感じる。

運転手 関の解説

「まぁそこまで大きい滝ではないけんど、こおして凍ってると迫力あんべ?猪高村の数少ない観光地だから、みんなでここらへんは綺麗に整備してんだ」

そういって関は写真を撮ろうといって記念撮影をしてくれる。

<目星>

凍る滝とその下にある凍り付いた池のあたりに不自然に氷が裂けたような跡を見つける。

<知識>

結氷した氷が気温の低下で収縮し表面に亀裂が入り、気温が上がるとその部分が膨張して、氷が持ち上がってできる現象だということを知っている。

探索者がその現象を見つけると関が付け加える。
「あぁ、御神渡りな。こっちの方だと北海道の屈斜路湖(クッシャロコ)でたまに見られる現象だへな。これは小さいから御神渡りだなんて大層なもんじゃないが…ひび割れた氷がながーく続くと、神様が渡って行ったあとみたいになるからそんな名前がついてるんだよなぁ?」

猪高村歴史資料館

関は「ちょっとしけてるが…」といって、歴史資料館に案内してくれる。
歴史資料館は小さな建物だが雪の映える黒い木造建築の綺麗な建物だ。入館料はたったの200円。

猪高村の歴史

猪高村は古い時代に人々が山を開拓する際にできていった村であることがわかる。
険しい山道や降り積もる雪のせいで開拓は断念とされてしまったが、湧き出てきた温泉などのおかげで村が繁栄し、やがて人が住める場所となっていった。

山の神伝説

開拓をしていく際に、神の顔をみたと言う作業員が何人かいたため、この猪高村の山々には神が棲んでいるとされて伝説となっていったという話。
一時期はその「神の顔をみた」という作業員の発言が混乱や恐れを招き、作業を離脱してしまう者も現れた。そこで村人たちはその神を奉り、開拓中に事故や死者が出ないように、吹雪にならないように作物を捧げ祈ったという。

資料館の中には小さな図書館もあり、そこでさらに調べることができる。

<図書館>

猪高村は標高の高い山の中にある村だが、その山を越えたさらに奥にもうひとつ「青女山」という大きな山があることが分かる。ふたつの山の間には湖があるが、その湖の名はかすれていて読めない。

資料館の情報について関に聞く

山の神の名やどういった神なのかなどを関に聞いても詳しくはわからないといって有力な情報は得られない。

温泉

じゃあ民泊予定の家に行く前にといって関は村一番の温泉に連れて行ってくれる。待っているからのんびり入っておいでといって関はそこらへんの飲食店に入って待っているようだ。

美しい大自然と煌びやかに輝く雪景色を堪能し、最高の温泉に入る探索者たちはここでSAN回復。(1d2)

温泉から上がると、探索者たちが今晩泊まる予定の民泊まで関が連れて行ってくれる。
身体がさめる前に宿へと到着する。
関は、「じゃぁ、明日また迎えにくるから」といって荷物を渡してくれる。

去り際に「なぁ、今日は楽しめたか?」と探索者たちに問う。

<心理学>

名残惜しそうで、すこし寂しげだと感じる。

CHAPTER:03民泊へ

宿泊する民家、釜下家

宿泊する家は大きな古民家。釜下(カマシタ)という表札が掛かっている。庭も美しく整備されており、旅館といってもいいほど綺麗な民家であった。
中に入るとすぐに割烹着を着た初老の女性が出てきて挨拶をしてくれる。

釜下 トミ子

朗らかで綺麗な女性。客の面倒や食事の支度など基本的な給仕をしてくれる。
「寒かったでしょう。ようこそおいでくださいました。釜下トミ子と申します」

トミ子は早速探索者たちを部屋へと案内する。家の中は暖かく綺麗で快適だ。
案内された部屋には既に布団が人数分敷かれており、まるで旅館の一室のようにくつろげるスペースまである。
部屋に案内しながら、以下のことを説明してくれる。

  • 私たちが暮らしている家ではあるが好きに使って良いということ

  • もうすぐ食事ができること

  • 食事は旦那の政二(セイジ)がつくっている事

  • もう準備ができるからすぐ降りてきてほしいという事

夕食

食卓へいくと、山の幸から魚、肉、酒と豪華な夕飯が並べられている。
探索者の人数分の座布団の他にあと2つ席があり、トミ子と政二も一緒に食べるようだった。

「いらっしゃい。待ってたよ」といって、トミ子よりも少し年上にみえるくらいの男性、政二が笑顔で迎えてくれる。

「民泊の中でも飯の出来はうちが一番だと思うよ!俺は昔レストランのシェフをやってたんだ」
「小さな村だけどみんなで良い村にしようってんで、村おこしを全員で取り組んでんだ」
「観光地も少ないけど、良い思い出を作ってもらう手助けはできるからよ」
など、政二は村に対する思いなどを語ってくれる。

食事中に想定される質問と回答

Q.山の神伝説について教えてくれ
A.猪高村を開拓しようとしたときに現れたっていう神様だろ?ただの昔話だが、今でも守り神とは言われているな。

Q.その神様の名前は?
A.んさぁー、実はそこまで根付いてる昔話でもねぇんだわ。その話は結局、開拓中の事故や災害の歴史を掘り返すことになるかんなあ。その時開拓に参加してた男どもの言い訳なのかもしんねぇな。

これについて<心理学>

政二の瞳が泳いだ。嘘をついたか、何かを誤魔化したと感じる。あまりこの話をしたそうではない。

Q.「青女山」という大きな山があるらしいが?
A.あぁ、この猪高山の向こうにある山だな。あそここそ標高も高いし雪だらけで、今の時期はとくに人なんか入れる山じゃねぇよ。

湖について探索者が訊くと少し反応が違う。
「湖?あぁ、猪高山と青女山の間にある湖な…あそこも綺麗だけんど…」と、明らかに声のトーンが落ち気まずそうにしている。

探索者が追及すると続きを話してくれる。
「あそこはなぁ、禁足地ってんだ。入っちゃいけない場所だ」
「俺が生まれたころからそう言われてたから行ったことはない。詳しいことも知らない…だけんど、そこに神様がいるって言ってる爺さん婆さんはいるな…」
「まぁただ単に、あそこは冬に凍り付くってきくから、踏み込むと危険だ~って意味じゃねえかな!」
これ以上湖について聞くことはできない。

部屋に戻る

食事が終わり部屋へ戻った際に部屋の情報を渡す。
ちゃぶ台、ポット、お茶、お菓子などが用意されている綺麗な部屋だ。探索者たちがコートなどを掛けたクローゼットの他に、部屋の隅に押し入れがある。
トミ子は、寒い時は押入れから好きに毛布をだしていいと案内してくれるだろう。

[押入れ]

数枚の座布団や毛布、ちゃんちゃんこなどが仕舞われている。それらの奥に小さな本棚があることが分かる。

<目星>または<図書館>

猪高村付近の古い地図を見つける。一見してみると、ここ猪高村周辺の地図ではないかと思うが、何点か気になる箇所がある。

まず「猪高」という文字が「猪」ではなく「畏高」と書かれている。畏高山のその向こうに青女山という雪山があり、そしてその二つの山の間に「ね洞湖(ネウロ コ)」という湖があるという点だ。

<アイデア>

湖の名前「ね洞」という言葉が気になった探索者は、とある漢字が思い浮かぶ。「贄」だ。この平仮名の「ね」にあたる漢字は「贄」だったのではないか。
贄の洞、贄洞、それが訛って現在の「ね洞」となったのではないかと思い至る。

探索者がさらに調べる場合、以下のキーワードで<図書館>に成功すると追加で情報が出る。

青女について<図書館>

霜・雪を降らすという女神。転じて霜や雪を青女と言うこともある。また、青女房という日本の妖怪の名でもある。

贄について<図書館>

贄とは日本独自の制度といわれ、神などに供える「神饌」(しんせん)と、天皇の食膳に供されるために諸国から進上される食物をさす2つの場合がある。
贄は海や山の産物であり、魚貝・鳥獣・果実などの生鮮品や加工品が中心となっている。
(※Wikipediaより引用)

宿での調査を終える

この日の夜は以上の調査までで終了となり、眠ることになる。
どうしても眠らない場合は満腹になったことにより睡魔が襲い眠りますとして寝てもらってください。

CHAPTER:04雪の洞へ

探索者全員が眠りについた深夜、釜下家の二人は村人を呼び、生贄として探索者たちを雪の洞の中へ運ぶ。
KPは以下の描写を読み上げ、洞の中の様子を伝えたのちに探索再開とする。

寒い、暗い場所にいる。床が硬い。身体が痛い。頭が重い。
リンと鈴の音が鳴る。誰かの話し声、物音、雪を踏む音。
「あぁ、ごめんなぁ。ごめんなぁ」
誰かの声がした。

やけに冷たい空気が入ってくる。痛むのは身体だけだろうか、頭も痛い気がする。
そもそも何故身体が痛むのか、ここは布団の上のはずだ。
いや布団の上であればこんなふうに体が痛くなるはずがない。
違う。痛いんじゃない。冷たいんだ。

そこでようやく意識が覚醒し、あなた達は目を覚ます。
そこは暗い、暗い、どこまでも暗い、そして冷たい空間だった。暗闇のせいで物体を捉えることができない視界のなかで、微かな明かりを捉えた。
月だ。
澄んだ夜空に浮かぶ月が、あなたたちを見下ろしていた。理解はできないが、ここがどこだか予測することはできた。

冷たい雪や岩で作られた、洞の中だ。遥か頭上にだけ出口がある地中の、洞穴の中だった。
SANC(1/1d3)

洞穴の中

そこは半径3mほどの空間で、地上まで4m以上はありそうなほど深い洞穴の中だ。周りの壁は突き出た黒い岩や凍り付いた雪でできており、素手では到底登れそうにはない。
さらに、出口となる穴の付近の壁がまるでネズミ返しのように張り出している。
周りには探索者たちが着ていた上着だけが放り出されている。

そして目が慣れてきたころ、この空間の奥に壁を掘ったような洞窟が続いていることに気づく。洞窟は木材などで補強されていて、何らかの入り口のように見える。
奥へ行こうとしても明かりが一切届かないため、何も見つけることはできない。反響する声や音からして、多少広い空間になっていることはわかる。せめて朝日が昇るまで待たないと探索できそうにないだろう。

ここからの恰好

探索者たちの恰好は寝間着姿であり、裸足である。靴はこの洞穴の中で発見することができる。
【2日目の朝】で寒さによるダメージの判定が入るが、靴を履かない場合はさらに-1される。

洞穴の中 - 2日目の朝

疲れから眠りに落ちた者、一睡もできなかった者様々だと思うがやがて朝が来る。外は曇っているのか、雪がちらついている。
まだ薄暗いが夜よりはまともに探索が可能。
また、全員寒さによるダメージロールを行う。<CON*5>失敗で(1/1d2)の耐久値喪失。

●極寒の中での探索

身も凍り付くほどの寒さの中探索することになるため、焚火なしで5時間以上動く場合は上記の方法で再度ダメージの判定を行う。
時間内で1時間でも温まればHPの減少はない。1箇所の探索でかかる時間は30分~1時間程度。火をおこすのにかかる時間は1時間である。

洞窟

木材できちんと補強された入り口になっていて、中もまるで小屋のようになっている。その空間には囲炉裏、そして真新しい木材が置かれている。
木材の数は35個。火を起こす場合、下記の火起こしルールを参照のこと。

●火おこしルール

木材の数は35個 。その他には葉などもいくらか用意されており、かなり原始的なやり方であれば火を起こせると思う。
<知識>もしくは<アイデア>成功で、火溝式と呼ばれる同じ場所を縦にこすり続けて摩擦熱で発火させるやり方を知っている、または思いついて良いとする。
万が一失敗しても、時間を置いて再チャレンジ可。

  • 火を起こすのにかかる時間は1時間

  • 暖を取るためには5個以上を使用し、燃やさなくてはならない

  • 10個使用でHPを1d2回復させてよい

  • 木材は粗末なものしか用意されていないため、1回の燃焼時間は5時間とする

  • 焚火から離れ別室にいる場合は回復にはならない(ちょっと部屋を見に行くぐらいだったら気にしなくてOK)

奥の空間

光りが届きにくいため薄暗い。ここも先程の部屋同様、適当な木材で補強された小屋のようになっているが凍っていたり壊れていたりしている。
この空間には木箱やなにかガラクタのようなものが少しだけ散らばっている。そしてまた奥に行ける通路があるのが分かる。

奥の空間を調べる場合、全員に<幸運>

ガラクタに混じってズタボロになった上着や靴などを見つけることができる。人数分以上あるため、全員それらを履くことができる。

奥の空間で<目星>

ガラクタの中から蓋の閉まった鍋を見つける。持ってみると少し重く、カラカラという音がする。蓋を開けてみるとそこには白っぽいかたまりがいくつも入っている。
よく見ずとも、それが何かの骨であることは素人でもわかる。さらに、医学に精通した者であればそれが人骨であると分かってよい。(SANC 1/1d2)

最奥の空間

入ってみようとしてもそこは真っ暗で、明かりがないととてもじゃないが探索できそうにない。その場で目星を振ることができる。

<目星>

入り口の手前に蝋燭が刺さった燭台が落ちているのを発見する。焚火から火をとることで明かりを確保できる。

蝋燭に火を灯してみても視界は広がらない。しかし、その足元にまた新たな蝋燭を発見する。それは蝋で地面に固定されており意図的に立てられているように思える。
よく目を凝らして周りを見てみると、あちらにも、そちらにもたくさんの蝋燭が立てられている。異様なほどたくさんの細い蝋燭が地面に立てられていることに気が付く。

蝋燭に火を灯していけばこの部屋の全貌が見られそうだと探索者に伝え、火を灯していくかどうか確認する。灯す場合、以下の描写を読み上げる。

蝋燭に順に火を灯す

蝋燭に火を灯していく。暗い空間が徐々に赤くぼんやりと照らされていく。
その空間のほとんどはいくつもの蝋燭で埋め尽くされていたが、異物は最果ての壁にあった。皿、とっくり、盛り塩、人の形にもみえる真榊、燈籠…そこにあったのは神棚だった。
朽ちかけている八足台が設置された奥に、壁に埋め込んだように社が置かれている。

そして何より目を引いたのは、社に置かれた人の顔だ。
その表情は怒りや悲しみ苦しみが入り混じったような恐ろしい形相をしており、歯のない口を大きく開いていた。老婆のようにも老爺のようにも見える。その長い白い髪が床にまで抜け落ちていて汚らしい。 白目まで赤く塗りつぶされたその眼球は、探索者たちを睨みつけていた。(SANC 1/1d3)

神棚

神具は全て朽ちかけていて放置されているように見えるが、置かれている米や塩、榊は綺麗でまだ新しいものではないかと思う。

社にある顔

落ち着いてから近づいてよく見ると、それは精巧に作られたお面ではないかと思う。

面に<目星>

面を覆う皮膚には細かい皺やシミが細かく再現されていて、裏側に植え付けられている毛髪のようなものには白いふけのようなものが紛れている。

<アイデア>

確かに面であるがこれを形作っているひとつひとつのパーツは本物の人間のものから作られているのではないかと思う。(SANC 1/1d3)

イベント:誰かの声

火を起こしている最中、もしくは探索が終了したころ、遥か上空の出口の方から人の声が聞こえた気がする。
声は遠く何を話しているのかはわからないが、その声は何かを叫んでいるようにも聞こえる。

助けを求める、大声をあげるなどすると声の主は近寄ってくる。見上げていると、ふらっと人影がその穴を塞ぐ。

「おおーーーーーーい誰かいるのかああーーーーー」

声からして男だとわかる。何か会話を試みようとしてもうまくかみ合わない。それどころか男の喋り方は少し支離滅裂だとも思う。

「気の毒になああーーーー寒いだろおーーーー寒いよなあーーーーー」
「俺も寒かったぜえーーー死にたくねえよなあああーーーー」
「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーあははははははははっはははははははははははははははは」
「他にも、他にもあるぞーーーーー」

など叫びながら男はどこかへ行ってしまう。

2日目の探索終了

2日目の探索で行えることは以上になる。
探索→火おこし→体を温めるなどしているうちに洞穴のなかは再び真っ暗闇になってしまう。もうやりたいことはないか確認したら、その日は何もできず夜は更けていくと伝える。

2日目の夜

助けも来ず、出ていく術もなく氷点下の洞穴の中凍える夜を過ごす探索者たちは、空腹や寒さからうつらうつらとしてしまう。
<CON*3>を振ってもらい、失敗した者は眠り、成功した者は微かに意識を保つことができる。
判定が済んだら以下の描写を読み上げる。

静かで暗い、絶望が支配した洞の中。現実か夢の中か、もしくはその狭間で意識を彷徨わせた。パキ…パキ…と木材が燃えていく頼りない音がする。
冷え切った空気のにおいに混じって、焦げ臭い物の焼ける臭いがする。

パキパキ…パキ…
煙臭い。臭い。誰かが木材以外を焼いたのだろうか。臭い。これは木が焼ける臭いではない。

「あったけえ、あったけえなあ」

男の声がした。

ここで探索者たちは自分の意思で意識を覚醒させることができる。
目を開けてみるとそこには余っていた木材を火にくべ、そして自らの身をその炎に抱かせ焼かれる男の姿があった。男は「あったけえ」とただひたすら繰り返し、気が付いた探索者たちに目もくれず燃え盛る炎の中から動こうとしない。(SANC 0/1d2)

<アイデア>

この男の声は昼間穴の上から聞こえてきた声と同一であると分かる。

<目星>

男は手に何か分厚い書物を持っているということが分かる。このままだと焼け焦げそうだと思う。
というか男は焼け死ぬだろうなというのは見てわかる。

男を助ける、火から遠ざけるなど

組み付きやこぶし、腕を引っ張るなどで判定してもいいし自動成功としても良い。
男の見た目は放浪者のようで、何枚もの服を重ねて着ぶくれしている。顔は浅黒く歯が抜け、しかしその目は獣のような眼光をしていた。

火から助け出した男の肌は手遅れなほど爛れ衣服と溶け合い異臭を放っていた。不衛生で応急処置をする場所も道具もないこの穴の中では、男を助けることはできなさそうだと悟ってもいい。
前述のCON*3で成功し、眠気に勝った探索者がいた場合は残りの木材の数は10個、全員が失敗した場合は残り5個とする。

男の話

男に応急手当や医学を振った場合HPを回復させて良いが、重度の火傷と衰弱、寒さによりいずれ死亡する。男はうわ言のように以下の話をする。

「あぁ騙された、騙されたんだ…お前らだってそうだろう?
こんな寒い場所に閉じ込められて雪が吹き込んで…全員凍るように死んでいったさ…俺は正気だった…家族を守らなくちゃいけなかった…指が真っ青になっちまった息子を抱いて必死に暖めたさ…」

「希望なんかは捨てた方がいい。だってなにもないだろう。気づいているだろうお前たちだって。
電波も食料も水もないこの穴のなかでどう生き延びるっていうんだ?まさかまだ助けが来るだなんて思ってないだろうな」

「俺は理由が知りたかった。だから生きようとした。食べたよ。許してほしい。いや許されるべきだ。だって家族って助け合うためにいるんだろう?…うっ…ひ…ぃひひひいひひひ…」

男から聞けること

Q.持っている本はなんだ?
A.やるよ、俺には無理だった。べつの贄共が持ってたやつさ。

Q.贄共とは?
A.他にもあるぜって言っただろう。ひっひひひひ…

男と二言三言言葉を交わすものの、男の焦点が合わなくなってくる。

「ようやく死ねるのか俺、あは、あははは…」
「ただ家族と、旅行に来ただけだったのになあ」
男は静かに息を引き取る。

男が持っていた本

焦げ臭いだけでなく、獣のにおいのような強烈な異臭がする分厚いカバーがかけられた本。 本の装丁には獣の皮をそのまま使ったかのように、ゴワゴワとした汚らしい毛が生えている。

中を見てみると、インクで書かれた手書きの書物であることがわかる。びっしりと何かが書かれているため、解読に3時間かかる。
本の内容は以下。

獣皮の書物

その書物には奇怪で曖昧で、そして恐ろしい内容が記されており数時間程度で全てを理解しようとするのは不可能だった。空漠とした頭で理解できたことは、これは誰かの手記であり、そして神について書かれているということだ。

それは風であり、雲であり嵐だ。人の形をした巨大な姿は歪み、苦痛に満ちた劣悪な顔を模倣する。
その落ちくぼんだ眼窩の奥で燃え盛る赤い目は、地獄の邪悪そのものであった。
それが歩むということは、この地上に嵐となって顕現することであり、この山に棲む人々はただその黒風が過ぎ去るのを待つばかりであったが、巨大な御身が満たされるようにと贄を捧げることもあった。

私たちはそれを「歩む死」と呼ぶことにした。
「歩む死」は風と雲、そして渦巻く雪を引き連れ吹雪の日に現れるが、相応の贄、精神を持って招来の儀を取り行うことで、顕現させることも可能だ。
しかしその竜巻のような奔流から逃れる術がなければ、二度とここに「歩む死」の姿を記録することはかなわないだろうが。

書物を読み歩む死と呼ばれた嵐の神の存在を知った探索者はSANC(1/1d3)
この記録を読むことで、この神を招来する方法を知ることができる。

●「歩む死」の招来

この呪文は雪の降り積もる山、神殿や塚で詠唱しなければ、神を招来させることはできない。

コスト:その場にいる探索者全員のMP9割を捧げる。
正気度喪失:1d10

招来されるイタクァ

召喚される神格はイタクァの化身、雪怪物であり、それは地球上と宇宙を常に動き回っており、召喚によってここに少しだけ立ち寄るだけにすぎない。そのため退散の呪文は必要ないとする。

※招来の呪文は当シナリオのためにルールブック記載のものから多少改変している

CHAPTER:053日目

その日は穴の中でも外がよく晴れているのがわかる。
焚火をしていた場合でも、寒さと疲労、衰弱によるダメージ判定を行う。
<CON*4>に成功した場合は0、失敗した場合は1のHP減少となる。

明るくなってからあたりを見渡してみると、穴のちょうど下の方に昨日まではなかった新しい雪が山積みになっていることがわかる。そして穴の淵からは、1本の頼りないロープが垂れ下がっていた。

●ロープチャレンジ

これは昨晩の男が下へ降りてくる際に使ったものだ。
雪の山を踏み台にロープへ捕まれば<登攀>または<STR*3>で上まで登っていくことができる。1人目が上まで登ったら次から登る探索者の手助けをするなどで、補正で+20して良い。
全員が外に出た時点で、ロープは朽ちて使い物にならなくなる。

穴の外

そこは一面真っ白な世界だった。見渡す限り平坦な雪景色。遥か遠くには山が見える。
空はどこまでも青く、透き通っていた。体の芯まで冷やすような新鮮な空気が肺に入る。

辺りには何もなく、足跡のないまだ新しい雪が降り積もっていた。
何もないとはいえ、ところどころに今までいた穴と同じようなものが点々とそこら中にあるのがわかる。

振り返るとそちらもまた一面雪景色なのだが、少し先に巨大な壁が立っていた。高さ10mはありそうな巨大な壁が、見える範囲すべてを囲っているように見える。そして、その壁には大きな扉がつくられていた。

また、山がある正面の方角に目を向けると、真っ赤な鳥居がひとつ立っているのがわかる。正確な距離はわからないが、鳥居は山と自分たちとのちょうど中間あたりに位置しているように見える。

周辺

自分たちがいた穴と同じような深い穴がいくつもあり、その全てにロープやはしごなどは取り付けられておらず入ることも出ることもできなさそうだと思う。近づくと崩れて落ちてしまうかもしれないため、中を覗くのは危険だ。

後方

コンクリートで作られた巨大な壁が、見える範囲すべてを囲っている。
壁はあまりにも高く向こう側が見づらいのだが、その向こうには山が少しだけ見えている。壁には扉がつくられているようだが、それはあまりにも大きく、人の力では到底開きそうにないと悟る。

<目星>

扉の一部の壁に模様が描かれており、それを囲うように切れ目があるのがわかる。そこをよく見てみると蝶番などの器具もついていることから、この切れ目は通常の大きさの扉なのではないかとわかる。
しかしこちら側には取っ手や開けられそうなノブなどもなく、開け方は不明である。

門を調べている最中、後ろからバキバキバキという大きな音がする。
驚いて振り返ってみると山の方、鳥居が見えたあたりから音がしたようだが、近づいてみないと何が起きたのか分からない。

山の方

山はこの何もない真っ白な雪の中をしばらく歩いていかないとたどり着けないほど遠いのだが、地面の穴に気を付けて進んでいくと鳥居にはすぐにたどり着く。

鳥居

真っ赤な朱色に染められた立派な鳥居だった。
新しい真っ白な紙垂としめ縄が付けられている。そして鳥居のその両端から山の方へ、まるでここを渡れと言わんばかりに、長い長い縄がただずっと伸びていた。その縄は途中途中に鈴と紙垂がぶら下げられていた。

鳥居から先は地面が一段低いところにあるのだが、よく見るとその地面は雪ではなく氷だとわかる。
何故なら、その地面が割れ氷がせり出していたからである。それは山脈上にただ真っ直ぐと、その縄で繋がれた道をたどるように割れていた。

<アイデア>

この氷が割れる現象は、先日案内してくれた運転手の関が「御神渡り」というと教えてくれたことを思い出す。
また、宿で地図を手に入れていた探索者ならば、この一面凍り付いた場所は地図で見た「ね洞湖」なのではないかと思いいたる。そうなれば目の前にある山は「青女山」だ。

湖を渡る

凍り付いた湖は問題なく進んでいくことができる。時折、微かにそよぐ風によって、鈴がリンと鳴る。ゆっくりとしっかり踏みしめて歩けば転ぶこともなさそうだ。

やがて対岸がはっきりと見えてくるが、そこにも鳥居が置かれていた。繋がれていた縄は鳥居と鳥居を結んでいたとわかる。
探索者たちが全員湖を渡りきり畔にあがったとき、山の方から強風が吹く。そしてその風は今来た道を吹きすさび、縄に下げられていた鈴を鳴らしていった。

青女山

その山は雪が降り積もった静かな山だった。
目の前には傾斜があり木が拓かれている。暗い道だが、他に道はなさそうだ。木々は風に揺れ話し声のような音を立てる。

探索者たちはその道を登っていく。この先に何があるのか、自分たちは助かるのか、残りの体力を消費してまで登る意味はあるのだろうかと、自問し絶望の中一歩一歩と歩みを進めた。

やがて、目の前に現れたのは雪に埋もれた石造りの這入り口だった。
それは雪の山肌でぽっかりと口を開けるように待っていた。中からは冷たい空気が出てくる。

青女の洞

中は真っ直ぐと伸びた石造りの廊下になっている。明かりがなく暗いが、奥がぼんやりと明るいため問題なく入って行けそうだと思う。

進んでいくにつれて気温が下がっていくのを肌で感じる。やがてひらけたホールのような場所にたどり着く。そこにはあの穴の中で見たのと同じような神棚があった。
穴にあったものよりも厳かで巨大で、そしてそれはもう神棚というよりも祭壇と呼ぶ方が相応しいかもしれない。
大きな人の顔の面を飾った忌々しい巨大な社が燈籠や蝋燭によって赤く照らされ、その祭壇の上には米俵や沢山の一升瓶などが置かれていた。

得体の知れない巨大な顔、そしてここが恐らくあの本で読んだ「歩む死」の神を祀った場所であると理解し、これを目撃した探索者はSANC(1/1d3)

(KP情報)ここで呪文のコストを払うことで「歩む死」を招来させることができる。

招来する

●「歩む死」の招来

この呪文は雪の降り積もる山、神殿や塚で詠唱しなければ、神を招来させることはできない。

コスト:その場にいる探索者全員のMP9割を捧げる。
正気度喪失:1d10

「歩む死」の招来を行うと宣言があった場合は上記の処理を終えた後、以下の描写を読み上げる。

詠唱が終わるとあたりの気温が一気に下がったことを感じ取る。一瞬にして体は凍えガチガチと顎を揺らすことになる。
そのとき風の音のような、地震のような轟音がこの洞の外から聞こえた気がする。
地鳴りは続き、微かに地面が揺れていることが分かる。

CHAPTER:06招来と逃走

洞を出る

洞を出ていくと一層地鳴りの音は大きく聞こえ、それは山の上の方から響いてくると分かる。
そして鳥居の方からクラクションが聞こえる。見てみると、軽トラックや乗用車が数台、凍り付いた湖の畔のほうからこちらへ登ってくるのが見える。

車は探索者たちの前で止まり、中から何人もの男が出てくる。どの人も、あの猪高村にいた住民だと分かる。彼らは手に猟銃を持っていた。
「おい、お前ら、なにをした」と青ざめた顔で聞いてくる。
何人かはそのまま洞に入って行く。皆慌てた様子で、怯えているようにも見えた。

晴れていた空は曇天に覆われ、吐息さえ凍り付きそうな冷気は、増々あたりを凍り付かせていく。

そのとき、山が轟いた。
地鳴りのように響くその咆哮は遥か山頂から雲を引き連れ降りてくる。否、雲ではない。雪崩だ。
まるでこの山から嵐が生まれるかのように、吹雪が、そして雪崩が竜巻のような奔流となってこちらに迫っていた。

渦巻く雪の中に赤く燃えるような光が2つ見える。顔だ。
巨大な顔があなた達を見下ろしている。苦痛や怒りに満ちた劣悪な顔がその雪崩の中で歪んでは表れ、そして叫び声を上げる。

歩む死、怒れる嵐の神「イタクァ」を目撃した探索者はSANC(1d4/1d20)

カーチェイス

ここからはイタクァと探索者のチェイスとなる。探索者はそこにある車に乗り込み、雪崩から逃げ門のところまで到達することで脱出成功となる。

イタクァを目撃したことによるSANCを終えたら、そこに乗って逃げられそうな車が複数台あると描写し、車を使うよう誘導する。
車を見てみると後部座席に一丁のショットガン(猟銃)が置かれていることがわかる。

チェイスのルール

チェイス用 盤面

イタクァとのカーチェイスは、探索者たちとNPCは「Player」からのスタート、イタクァは一番左端「Boss」からのスタートとなる。

チェイス用 駒

チェイス用素材について

チェイス用の盤面の上にイタクァ、探索者の車、NPCの車の駒を置いてチェイスを開始する。探索者の車は、分かれて車に乗った場合を想定して青赤黄の3色を使う。灰色の車はNPC(エネミー)用。
かわいいイタクァを目指して描きました

●ドライバー(探索者の車)

  • 車の耐久値は20で、車両が壊れた場合ほかの車に乗り移るかしないと神格からの攻撃を生身で受けることになる。

  • イタクァから逃げ切るには合計13マス以上進む必要がある。

  • <運転>で判定し、成功の場合3マス、失敗の場合1マス進む。

  • <運転>でスペシャル、クリティカルが出た場合は、PLから他に提案がない限りはNPCからの攻撃を判定無しで避けることができるとする。

  • 探索者がクリティカルを出した場合に、万が一NPCもクリティカルを出した場合はPLに<運転>を振ってもらい、成功すれば回避となる。失敗した場合は1d4のダメージ。

●一緒に乗っている探索者の行動

車の中には一丁のショットガンが置かれているため、使用することができる。

  • 攻撃対象と並走した場合は2d6、1マス後ろは1d6、2マス後ろの場合は1d3のダメージとなる。

  • 3マス以上、攻撃対象との差がある場合は判定不可。

  • ショットガンの成功率は初期値で30%である。

●乗り移り

乗っている車の耐久値が0になる前に他の車へ乗り移りを行える。乗り移れる車は並走・もしくは1マス以内の場所にいる車のみだ。
アクセルはどうするのかなど懸念点はあるがここはハリウッドなのでできるものはできる。

  • <跳躍><登攀><組み付き>のいずれか、もしくは<DEX*4>で乗り移れるかを判定する。

  • 乗り移りに失敗した場合、探索者は対象の車にしがみついた状態で1ターン進むことになるため、イタクァの攻撃を生身で受けることになる。次の探索者のターンで仲間に引き戻してもらっても良いし、ターン終了後自動で車の中に入ることができる。

●イタクァの攻撃

1ターンで2マス進む。車両と並走になった場合、<寒気>を行い、ドライバー(探索者の車)は攻撃の回避は不可能。

[通常攻撃]
猛吹雪:80%
車両が受けるダメージ:1d6
生身の人間が受けるダメージ:1d4+1d3のCON減少

[車両と並走した場合の攻撃]
寒気:70%
車両が受けるダメージ:1d6
生身の人間が受けるダメージ:1d6+1d3のCON減少。さらに<幸運>を振って失敗した場合APP-1d3

攻撃によるダメージ判定

難易度調節のため、ダメージの判定はKPではなく、PLそれぞれが振って確定させること。(KPが振ると全員に同じダメージが入り、ほかの車に乗り移り生き延びるチャンスなどがなくなるため)

●NPCの動き方

  • 車の耐久値は20で、車両が壊れそうになると探索者の車に乗り移ろうとしてくる。

  • <運転>で判定し、成功の場合3マス、失敗の場合1マス進む。

  • NPCは助手席から探索者の車に向かって猟銃で攻撃をしてくる。探索者と並走した場合は2d6、1マス後ろは1d6、2マス後ろの場合は1d3のダメージとなる。

[NPCの技能]
運転:70%
ショットガン:40%

チェイス中のターンの回り方

チェイス中は、
[探索者・NPCはDEX順で<運転>判定]→
[イタクァの前進]→
[探索者・NPCはDEX順で自由行動]→
[イタクァの攻撃判定]
という流れで1ターンとなる。

門の向こうへ

探索者たちが無事に全てのマスを抜けきったら以下の描写を読み上げる。

全速力で走る車は凍り付いた湖を超え、あの穴を超え、そして門に到達する。大きな門は開かれていなかったが、あの時確認した何か紋章が描かれていた方の門は開いていた。

あなた達は躊躇わずそこを潜ろうと、アクセルを踏む足に力を込める。迫りくる「歩む死」の咆哮を背に、車はその門をくぐった。
ほぼ同時に、背後で雷鳴のような、爆発音のような轟音を聞き、その衝撃で車内は大きく揺れた。

誰かが後ろを確認するかもしれない。
あの巨大な壁が、吹き荒れる猛吹雪とあの神の身体を受け止めたのだ。まるで全ての吹雪と巨大な雪崩ががそこに集結するかのように壁へ打ち付けられていく。
そのとき先程よりも強い寒気が、車内までをも凍り付かせた。吹き荒れる猛吹雪により、車は前に進めない。
徐々にその車体ごと、雪で覆いつくしていく。

寒気による負傷

ここで探索者全員に急激な寒気による対抗ロールを行う。
<CON*5>を行い、失敗の場合はHPを1d2減少させる。さらに1d5を振り、該当した身体の一部を凍傷により傷つける。

1:顔
2:右腕
3:左腕
4:右足
5:左足

ENDINGエンディング:地の底からの生還

それは一瞬であっただろうか、とても長い時間にも思えた。
凍える身体を奮い立たせ、ハンドルを握る者はただひたすらアクセルを踏み続けたかもしれない。車が雪に埋もれ動かなくなるが、やがて全てが壁に吸い込まれたかのように嵐は過ぎ去っていく。

外が静かになったころ、誰からともなく車から降りる。埋もれたドアは開けるのに少しだけ苦労した。

外に出てみると、もう壁の向こうは静まり返っていた。
ここから見ても、先程よりも高く降り積もった雪が、全てを埋めてしまったと分かる。静かになったこの地に、再び太陽が姿を現した。

こうしてあなた達はあの暗く寒い地の底からの生還を果たしたのだ。

生還報酬

生還:SAN値回復1d10
ひとりも欠けることなく生還:SAN値回復1d6
書物を読んだ場合:クトゥルフ神話技能+1%

持ち帰った書物について:
書物は最後に探索者たちを襲った寒気により痛み、二度と読むことはできなくなる。呪文を習得したわけではないので、イタクァの招来を覚えて帰ることはできない。

あとがき

2021/5/2:シナリオ公開(シナリオ集「言伝四季折々」収録)
2022/5/10:加筆修正、再公開

サークルメンバーそれぞれに季節を割り振った結果、私が冬を担当することになりました。ならば極寒の地獄を作らねばなるまいと思い作成したシナリオです。理不尽に洞穴に放りこまれた鬱憤をカーチェイスで発散していただけたらと思っています。

洞穴の中からが本番なので、観光フェーズはかなりさっぱりと描かせていただきましたが、KPの裁量でもっと楽しい観光地を作ったり美味しそうなご飯を出したり、好きなように改編して楽しんでもらえたら嬉しいです。

AUTHOR

永田和希@naga_tatta

シナリオ・トレーラーを作成

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