季節は秋。探索者は親しい知人、または家族と二人で帰宅している道中でふと足を止める。
焼き芋屋のトラックが道端に停車し、甘く美味しそうな匂いがあなたたちを誘っていた。
短時間 / タイマン / 不快感
DESCRIPTION概要
- 推奨人数
- 1人(KPCとのタイマン)
- 推奨技能
- 目星、聞き耳
- 準推奨技能
- 図書館、心理学
- 時間
- 1時間
季節は秋。過ごしやすい気候になってきた頃、探索者は親しい知人、または家族と二人で帰宅している道中でふと足を止める事になる。
その目線の先では、焼き芋屋のトラックが停車し、甘く美味しそうな匂いが二人を誘っていた。
KP向け情報
THE TRUTH真相
魔術師や小規模の教団に若干のツテがある男が、地獄の植物の種子を焼き芋に仕込み販売している。
男は犠牲者がそれを食べた頃合いを見計らって、発芽のための呪文を焼き芋カーのスピーカーから流して成長させ、そうして収穫した地獄の植物をツテ先に販売することで生計を立てているのだ。
今回、探索者たちはその被害に遭ったというのが真相である。
NPCNPCと登場神話生物
焼き芋屋の店主
若干小汚い印象を受けるおっさん。地獄の植物の種子入り焼き芋を買ってもらおうと、あの手この手で売ってくる。
名前は矢崎 源五郎(やざきげんごろう)。狂人というより、楽に稼げる手段として地獄の植物の売買を行っているようだ。
地獄の植物
マレウス・モンストロルム (P.51)参照のこと。
今回は種子が焼き芋に仕込まれている。
ATTENTION補足
持っているといいサプリメント
必須ではないが、マレウス・モンストロルムに記載された神格が登場するためKPはサプリメントを所持していることをおすすめする。
導入
季節は秋、過ごしやすい気候になっていき、山や街路樹が思い思いにその色を変えていく。
探索者は現在、NPC と外に出ており、今から家に帰ろうと歩いているところだ。
理由は何でもよい。友人や恋人であれば家で遊ぶ約束をしたのかもしれないし、一緒に住んでいるのなら買い出しの帰りでもいいだろう。
もうすぐ家に着くといったところで、ふと NPC が足を止める。
自宅横の空き地に停まっている焼き芋屋の軽トラックを見て、焼き芋を買いたいというNPC。
本編
CHAPTER:01焼き芋の列
購入するために探索者たちは、屋台に並ぶ列に加わることになる。
列といっても並んでいるのは2~3組ほどで、すぐに順番が巡ってくるだろう。
焼き芋屋のトラック
見た目は普通の焼き芋屋。「焼き芋やっちゃん」というのぼりを脇に括り付けている。
<目星>
運転席に煤が付いていない軍手と、麻袋のようなものが置かれているのに気が付く。麻袋からは葉っぱの先端や、植物のツルのようなものが見えている。
<アイディア>
麻袋に入っているのが焼く前の芋だとしても、軍手には土なども付いていない様子だ。
焼き芋を買う
「うちの焼き芋は美味しいよ。」「2本買ってくれるなら少しおまけしよう。」等々、探索者とNPC に焼き芋を買わせようと歯の抜けた笑顔で接客をしてくる。
<心理学>
店主はかなり食い気味で、焼き芋を買ってほしそうにしている。どことなく必死さが伺える。
焼き芋を買う
購入すれば、店主は NPC にニコニコと焼き芋を紙袋に入れ渡してくる。
「冷めないうちに食べてね。冷えると美味しさ半減しちゃうから。」と早めに食べる事を勧めてくる。
買わない場合
ここで探索者が買わずとも、NPC は二人分の焼き芋を買い求め、探索者に渡す。
探索者が受け取らない、または食べないという選択を取った場合、NPCの反応は様々だと思うが、一先ず自分の手元にある焼き芋を食べ始める事になる。
<目星 or 心理学>
NPCが一瞬眉を顰めて食べるのを止めた事が分かる。
理由を聞く
以下のような回答が返ってくるだろう。
Q. どうかしたの?
A. 焼き芋が少し生っぽいような気がした。
Q. 食べて大丈夫なの?
A. 本当に少しだから大丈夫だと思う。
ここで NPC は、そのまま気にせず食べ続けてもよいし、食べることを止めてもよい。
探索者は、NPC が食べ続けるのを止めることは出来るが、種子は既に胃の中に入っているのであまり意味は無い。
店に戻ってこの事を店主に問い詰めるのであれば、店主は平謝りをしながら料金を返し、新しい焼き芋をサービスとして渡してくるだろう。
CHAPTER:02帰宅
NPCと共に帰宅した探索者は、焼き芋が入っていた紙袋を捨てようとした際に、中に小さなチラシが入っている事に気が付く。
チラシ
『次回購入時にこのチラシを持ってきてくれた方には10%OFF!! 営業日などの詳しい情報については、「焼き芋やっちゃん」で検索!!』といった内容が書かれている。
<図書館>
「焼き芋やっちゃん」というワードでweb検索をかけると素人が作ったような簡素なホームページと、とある掲示板のスレッドが目につく。
ホームページに特段気になるような内容は無かったが、掲示板の書き込みで、以下のような内容を見つける。
【悲報】焼き芋くってからめちゃめちゃ腹が痛いンゴwww
1: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
痛すぎ助けてwww
2: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>1
骨は拾ってやるよ
3: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
芋腐ってたんじゃね?
4: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
いや、腹を下した痛みじゃない…もっとこう腹に穴開けられてるみたいな痛み…めっちゃ痛え……
5: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>4
アニサキス?
6: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>5
芋にいるわけねえだろwww
7: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
ちょ待ってどんどん痛くなるwww 外うるせえしwww
後でぜってえ文句言ってやる…
8: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
1 はどこで芋買ったの?
9: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>8
確かやっちゃんとかいうのぼりが立ってる焼き芋屋だったと思う…
いやマジ無理本当に痛い。
10: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>1
病院行った方がよくね?
11: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
>>1
おーい
12: 小鳥と芋と名無し :2021/10/00( ○ )
1 死んだか…?
- このスレッドにはもう書けません -
夕方まで自由行動
ここから次の展開である【異変】が起きるまで自由行動になる。NPCの家に行くことになった用事や茶番を少し挟むと良い。
やりたい事等が無ければ、そのまま飛ばしてしまって構わない。
CHAPTER:03異変
互いに思い思いの時間を過ごしていた探索者たち。
夕方に差し掛かった頃、ふと窓の外からスピーカー越しの、間延びした男の声が聞こえてくる。
「いーしやあーきいもおーーーーオイモッ」
その声は、風通しを良くするために開けられた窓から、これでもかというくらいの大音量であなた達のいる部屋に響いている。
NPC は「あれ、まだ売ってるんだ。頑張ってるね」「でもちょっとうるさいなあ…」等と言いながら、外の様子を見るために窓に近付いていく。
探索者も NPC につられるような形で外の様子を見ると、先ほどの空き地に焼き芋屋の軽トラックが停車しているのが見える。
その間も、絶え間なくスピーカーは音を吐き出し続ける。そのノイズ交じりの不快な宣伝文句を聞いていると、頭痛がしてくるような気さえするだろう。
<聞き耳>
音割れを起こしている宣伝文句の合間に、何か他の音が混じっているような気がする。
探索者が顔をしかめながらその様子を見ていると、NPC が唐突に横でしゃがみ込む。
「うう、お腹が痛い……」
そう言って蹲ったまま動かなくなるだろう。
声をかける、様子を見るなど
NPC に何かしらのアクションを起こしたところで下記の描写を入れる。
NPC を心配し様子を見ていたあなたにも直ぐに異変が起きる。
お腹が痛い、いや、痛いなどという生易しいものではない。激痛だ。胃の中を引っ掻き回され、穴をあけられるような、そんな痛みが探索者を襲う。
探索者は耐えきれずその場に蹲ってしまう事だろう。
どれほどの時間が経ったのだろうか、ほんの数十秒なのかもしれないが、今の探索者にとっては何十分にも感じられたかもしれない。
ふと、気が付く。変わらず探索者に苦痛を与え続けるその胃に、何か違和感を覚える。胃の中で何かが蠢き、這いまわり、胃を圧迫していく。そんな感覚があった。
それは探索者の胃の中で徐々にではあるが、肥大化をしているように感じる。<SAN チェック>(1/1d3)
胃の中の脅威
胃の中の脅威は探索者を徐々にむしばむ。ここからは探索者の行動毎にCONで動けるかどうかの判定を行う。
1回目の<CON*6>
成功:腹痛に耐えて探索をすることが出来る。(2回行動可能)
失敗:腹部の激痛に耐え切れずその場に留まってしまうが、少しした後、どうにか立ち上がり、探索をすることが出来る。(HP-1、1回行動可能)
CON 判定の値を、CON*6、CON*5、CON*4…と徐々に下げていき、判定後、進行度に応じて下記のような描写を入れて焦らせてもよい。
胃の中にいる何かの動きが、だんだん確かなものになってくる。
食道を何かがせりあがってくる感覚がある。痛みに思わず呻いてしまう。
喉を何かに締め付けられるような感覚がする。堪らず嗚咽が漏れる。
喉の奥から何かが上ってくる。それはずるずるとあなたの口内を這いまわっている。
貴方の口の中を粘液にまみれたツタのようなものが覆いつくしていく。呼吸がしづらくゼエゼエと喉が鳴る。
探索者は激痛にどうにか耐えながら、立ち上がり、探索を開始する。外からは変わらず、うるさい焼き芋屋の宣伝文句が聞こえてくるだろう。
NPC
先ほどまでしゃがみ込んでいたNPCは、いつの間にかその場に倒れ伏し、動かない。
様子を見る
呼吸が浅く、かなり苦しそうにしているのが分かる。
<目星>
探索者は NPC の安否を確認するために、顔を覗き込んだ。NPC の口から何かがはみ出ている。
口を開ける
NPC の口から覗いていたもの、それはツタだった。いや、ツタというにはあまりにも悍ましいものだ。
粘液まみれのそれは、NPC の口内をのたうつように這いまわりながら、探索者に手を伸ばすかのように、徐々に徐々にその身をのばしている。
<SANチェック>(1/1d6)
ツタを引き抜こうとする
引き抜こうとするのなら、下記の描写を入れる。
探索者は引き抜こうと思い、NPCの口内を覗き込む。
のたうちまわる粘液にまみれた植物が、NPCの口内を埋め尽くしていた。舌や歯に絡みいてるその植物は、まるでNPCに根を張るかのように、その身を喉の奥に張り巡らせているように思えた。
このまま引き抜こうとするのであればそれ相応の力がいるだろう。
<アイディア・医学>
上記に加え、NPC の体内に致命傷を負わせてしまう可能性があると感じる。ここで再度、引き抜くかの確認を取る。
それでも引き抜く
それでも引き抜く場合は、下記の処理から片方を選択して、判定を行う。
<DEX*5> … 成功でNPCのHPから-1d6
<STR*5> … 成功でNPCのHPから-1d8
家の外に出る
外に出ると、家の脇にある空き地に例の焼き芋屋が停車しており、先ほどから探索者に不快感を与えている宣伝文句を大音量で垂れ流している。
店の様子
車内は無人で、軽トラックの上には2台のスピーカーが取り付けられている。そのスピーカーからは2本のコードが伸びており、開いた窓から助手席へと続いているようだ。
店主を探すなら、車の向こう側で折り畳み椅子にどっかりと腰かけ、探索者と車に背を向けた状態で、煙草をふかしている様子が分かる。
助手席
助手席を見てみると、コードがアンプに接続されており、そこからさらに2台のラジカセに繋がっていることがわかる。
<目星> or ラジカセをよく見る等の宣言
それぞれのラジカセにテプラが貼ってあり、片方には『芋』そしてもう片方には『発芽』と書かれている事が分かる。
ラジカセを止める
『発芽』のラジカセを止める
先ほどまで宣伝文句と共に流れていた奇妙な音が止まったように感じる。
それとほぼ同時に、あなたの胃から痛みが引き、胃の圧迫感が無くなっていくのが分かる。
店主が気が付く事は無い。
隠れるなどして暫く様子を見ているのであれば、煙草を吸い終えた店主がトラックの助手席に戻っていくのを見る。しかしその場で頭を抱えながら何事か呻いた後に、運転席に乗り込んだかと思うと、焼き芋屋はそのまま空き地から出ていく事だろう。
『芋』のラジカセを止める
大音量で流されていた「いーしやあーきいもおーーーーオイモッ」の宣伝文句がぴたりと止まり、店主が異変に気が付き振り返る。
探索者に気が付くと、「あ!てめえ何しやがる!」等と言いながら探索者の行為を止めに入る。
ここで探索者が逃走するなら追ってくるような事はない。探索者が抵抗するようであれば戦闘ロールに入る。
[焼き芋屋の店主 やっちゃん]ステータス
STR:10 CON:9 POW:10
DEX:10 APP:8 SIZ:10
INT:10 EDU:12
HP:10 MP:10
技能は全て初期値
この戦闘で店主を殺害すると、周到に証拠隠滅でもしない限り、警察のお世話になる。
ENDINGエンディング
探索者が無事に「発芽」のラジカセを止め体内の異物の成長を阻止することができたあとに家に戻ると、倒れていたNPCが起きており、戻ってきた探索者に声をかける。
「あれ!どこに行ってたの?」「ごめんね、お腹が痛くなったのは覚えてるんだけどいつの間にか寝ちゃってたみたいで…」
等と探索者に対していつもと変わらない表情を向けてくる。
探索者は、突如襲ってきた脅威を退け、いつもと変わらない日常を取り戻すことが出来るだろう。
生還報酬
生還:SAN 値回復 1d6
あとがき
2021/5/2:シナリオ公開(シナリオ集「言伝四季折々」収録)
2022/8/11:加筆修正、再公開
焼き芋を二人で食べるほんわかシナリオと見せかけて、身近で嫌な体験の一つである腹痛に襲われるという落差をやってみたくて作成しました。